抄録
【目的】
近年,疼痛や筋緊張の異常に対するアプローチとしてMyo-Tuning Approach(MTA)が紹介されている。今回、MTAの施行によって効果の得られた関節リウマチ(RA)患者を経験したので報告する。
【対象】
転倒による右上腕骨骨折により当院入院中のRA患者70歳(女性)
罹患年数49年(Class2 stage3 )
AAS+(ADI flex 7mm・ext 6mm )
現症:AASの頚椎症状による両側の頭板状筋、肩甲挙筋、僧帽筋上部線維の異常緊張。右肩関節の三角筋前部及び中部線維、上腕二頭筋長頭の異常筋緊張と運動時痛。両側の腸腰筋、中殿筋、大腿筋膜張筋の異常緊張と歩行時痛。跛行著明。院内移動は歩行器使用。
【方法】
症例の異常緊張を呈している頚部、右肩、下肢の筋肉に対してMTAを施行した.症状の原因となる責任筋を特定し、痛みを伴わない触圧刺激で責任筋の症状を改善できる抑制部位を探す。抑制を確認できれば、責任筋を軽く圧迫しながら抑制部位に10~15秒の触圧刺激を加える。最後に責任筋の症状改善を確認する。
効果判定の指標としてVAS変法とフェイススケールを用いて疼痛の変化を施行前・施行直後・1時間後・3時間後・夜間・翌日で記録し効果を判定した.また,パフォーマンスの指標として10m歩行の時間と歩数を記録した.治療期間は15日間(平成17年10月12日から11月2日)であった.
【治療結果】
治療開始初期,後頚部痛は施行後VASが5であったが、7回目以降は5未満となり終日持続した。
FSについては6回目以降には施行後5以下であった。また、一時的に疼痛が増悪したが患者の就寝時の姿勢、枕の高さや位置を指導することで改善した。
右肩関節は自動屈曲角度が改善した。施行後のVASも初期から5以下と訓練に伴う運動時痛はその
殆どを抑制出来た。FSについても4日目以降、5以下を維持していた。
下肢に対しては初期からVASが5以下であり、歩容、歩行スピードにも著明な変化が現れた。また、訓練室来室も2日目より独歩となった。
【考察】
後頚部痛をMTAで抑制することが出来た。これは痛みがAASによる頚椎症状だけでなく、疼痛性反射収縮による筋緊張性疼痛であったことを示唆していると考える。
右肩関節への施行については全治療期間において肩関節屈曲角度と運動時痛が改善していた。他動
訓練においては殆ど無痛であり、これが患者の精神面にプラスに働いた結果,早期よりFSを低値に維持する要因になったと考えられる。
MTA施行後の歩容の改善と歩行時間の向上は筋緊張の改善と筋出力及び筋肉の収縮能が改善されたものによると考えられる。
関節滑膜を病変の主座とし骨・軟骨に不可逆的変化をもたらすRAには一般論として治療手技としては不向きであるとの見解があるが,本研究結果より骨関節に過負荷を負わせることなく筋緊張や疼痛を抑制できるといった点でMTAはRA患者であっても適応可能であることが示唆された。