理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
睡眠時の体動と嚥下の関係性について
山下 浩史佐藤 慎徳増 来斗兼子 光治鈴木 祐介一之瀬 大資大城 昌平
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キーワード: 睡眠, 体動, 嚥下
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p. Ae0050

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抄録
【はじめに、目的】 嚥下は生命維持に必要な機能であり,肺や気道を保護するために睡眠時にも生じている.睡眠時には,個人差があるものの寝返りを主として多くの体動が起こっている.睡眠時の体動は,睡眠相の移行や覚醒期への移行の引き金になっていること(白川,1989)や睡眠時には,嚥下回数が減少すること(Sato,2011)が報告されているが,睡眠時の体動と嚥下の関係性についての報告は見当たらない.誤嚥性肺炎の発症メカニズムは,夜間を中心に気付かないうちに鼻腔,咽喉頭,歯周の分泌物を頻回に不顕性誤嚥することが主である(寺本,2009)と指摘されており,誤嚥性肺炎を予防するには夜間の嚥下にも着目しなければならない.そこで本研究では,誤嚥性肺炎の予防のための基礎研究として,健常成人の睡眠時の体動と嚥下回数の関係性について検討することを目的とした.【方法】 対象は,健常成人男性4名(年齢25.0±2.3歳)で,測定は当院健康管理センター内の個室にてベッド上で就寝しながら実施した.測定項目は,総睡眠時間,睡眠段階,睡眠中の体動,嚥下回数とした.睡眠時間,睡眠段階の判別に脳波を,嚥下回数の測定に表面筋電図を日本光電社製Neurofaxμ,EEG-9100を使用して同時に測定した.脳波は10/20法に従って,被験者の頭部中心部(C3,C4),後頭部(O1,O2)と両側の乳様突起下端,前額部(アース)に電極を装着し,双極誘導にて測定した.睡眠段階の判定はR&K法(1968)に従った.嚥下回数は,皮膚処理を十分に行った後,オトガイ隆起―下顎角の前1/3で電極間距離を3cm(興津,1998)とし,舌骨上筋群上に皿電極を装着して表面筋電図を測定した.また,測定開始前には,電極のインピーダンスチェックを行い,脳波は10~15kΩ以下,筋電図は10kΩ以下であることを確認し,ACフィルタを使用して測定した.睡眠時の体動は,デジタルビデオカメラ(Victor Everio GZ-MG275)で撮影,観察が可能な照度の間接照明を使用して撮影した.なお被験者には,測定前夜に十分な睡眠をとるよう指導し,当日は昼寝,過度な運動,アルコールやカフェイン含有飲料の摂取を禁止した.また,本研究では,体動を「単独の四肢運動を除く,頸部・体幹の回旋運動」,睡眠段階のStage1,Stage2を「浅睡眠期」,Stage3,Stage4を「深睡眠期」と定義して実施した.結果の解析は,事前に安静臥位で測定した嚥下時の筋電図波形と睡眠時の波形を照合して嚥下回数を算出し,脳波アーチファクトとビデオ撮影した動画を照合して体動回数を算出して行った.また,脳波から睡眠段階を判別し,浅睡眠期と深睡眠期に生じた嚥下回数の割合を算出した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は,当院の倫理委員会の承認を得て実施した.また,実施にあたっては,対象者に研究の趣旨,方法,被る可能性のある不利益,プライバシーの保護について書面および口頭で説明し,同意を得た.【結果】 被験者の総睡眠時間は,平均335(±26.4)分であった.筋電図上,嚥下は仰臥位もしくは側臥位への体動と関連して観察された.被験者ごとの総嚥下回数はそれぞれ30回,5回,22回,17回,頸部・体幹の回旋を伴う総体動回数はそれぞれ36回,6回,15回,19回であった.また,体動と関連して生じた嚥下回数は,それぞれ20回(55.6%),4回(66.6%),12回(80%),11回(57.9%)であった.浅睡眠期と深睡眠期に体動に関連して生じた嚥下回数の割合は,浅睡眠期83.3%,深睡眠期16.7%であった.【考察】 睡眠時の体動と嚥下の関係性について検討を行った結果,嚥下回数が多い被験者ほど,頸部・体幹の回旋を伴う体動の回数が多く,また嚥下の多くは浅睡眠期に,体動に関連して生じており,夜間睡眠中の嚥下回数と体動には関係性があると考えられた.したがって,頸部・体幹の回旋運動や寝返り動作が困難な高齢者では,夜間睡眠時に誤嚥を生じやすいと考えられた.【理学療法学研究としての意義】 先行研究では,基本動作能力の低下している要介護高齢者は,摂食嚥下障害の予備群である可能性が指摘されている(横井,2005).本研究の結果から,睡眠時の嚥下回数と体動(頸部・体幹回旋や寝返り動作)には関係があると考えられ,したがって,誤嚥性肺炎の予防の理学療法では,夜間睡眠中の体動にも着目し,また頸部・体幹の回旋運動や寝返り動作の改善は誤嚥性肺炎の予防に結びつくと考えられた.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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