抄録
【はじめに、目的】 神経変性疾患であるパーキンソン病(PD)は、アルツハイマー病に次いで有病率が高く、地域理学療法において支援する機会の多い疾患である。著者の予備研究では、在宅PD患者が『グループ(共通点を有する人の集まり)』にて役割を有することが、うつ症状の軽減に関連があることが示された。この結果を基に、山口らが提唱する1)快刺激、2)ほめられる、3)コミュニケーション、4)役割を演じる、5)誤らない課題を原則とした脳活性化リハビリテーション(脳活性化リハ)を用いて、PDの患者・家族支援の効果を検証することを目的とした。【方法】 対象は群馬県パーキンソン病友の会多野藤岡地区会『鏑会』に所属するPD患者11名とした。対象を2つのグループに無作為に分類し、両グループに対してクロスオーバーデザインを用いた週1回、8週間の脳活性化リハの原則に基づいた介入を実施した。1回の介入は90分間とし、話題提供(10分)、体操・運動(25分)、休憩(5分)、主活動(40分)、振り返り(10分)を行った。主活動は毎回異なる内容(折り紙、ベル合奏、体験テレビゲーム、コミュニケーションゲーム、バランスゲーム、音読、自然散策、絵手紙作成)を実施した。介入前後と観察前後に、左右の最大片脚時間、Timed “Up & Go” Test (TUG)、Unified Parkinson’s Disease Rating Scale (UPDRS)、Parkinson’s Disease Qusetionnaire-39日本語版(PDQ-39)、Mini-mental State Examination (MMSE)、Life Space Assessment (LSA)、日本語版Falls Efficacy Scale (FES)、バイタリティーインデックス、アパシースケールを評価し、介入後には満足度などのアンケート調査を、家族3名を含めて行った。分析は介入期前後の比較、介入期と観察期の比較、アンケート結果の分析を行い、介入効果を検証した。【説明と同意】 対象者には協力依頼の際、「ヘルシンキ宣言」の遵守、人権擁護、プライバシー保護に基づいた書面での説明後、同意の署名を得た。【結果】 介入期前後の比較では、介入後に意欲低下(アパシー)が軽減する傾向が認められた(p=0.063)。また、評価項目を『改善・維持』、『悪化』に分類した結果、TUG、PDQ-39社会的支え、PDQ-39コミュニケーション、FES、アパシースケールの項目で『改善・維持』の割合が観察期よりも介入期で高くなった。アンケートの結果、絵手紙、ベル合奏、体感テレビゲームが、楽しかった活動として多く支持された。運動・体操では“ラジオ体操をするようになった”、“なんでも挑戦したい”など、主体的な行動への変容も認められた。【考察】 脳活性化リハの原則に基づいたPD患者・家族への支援効果を検討し、QOL改善への可能性を見いだすことができた。特にPD患者のQOLに関連があるとされる意欲低下の改善は、患者だけでなく家族にとっても重要であり、ドパミン作動系に対して良い影響を有する可能性があると考えられた。今回のような患者・家族同士の相互支援を目的とした介入は、地域リハビリテーションとしての支援・サポート体勢確立への一助になったと考えられるが、より定量的で体系化した介入手法としての確立が課題である。【理学療法としての意義】 ピア・カウンセリングという言葉が広がっている現在、運動療法を得意とする理学療法士にとっても、障害を有する患者・家族の相互交流への地域支援への知識、実践は重要であり、活躍の場を広げる可能性を有すると考える。また、難治性疾患患者への包括的なリハビリテーションを提供する上で、地域で生活する患者へのサポートは理学療法士として重要であると考える。