理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
2本のポールを使用したノルディックウォーキングが変形性股関節症患者の体幹動揺に与える影響
地神 裕史本間 大介佐藤 成登志遠藤 直人
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p. Ca0265

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抄録
【はじめに、目的】 変形性股関節症(以下,変股症)患者の歩容の特徴としてトレンデレンブルグ跛行に代表される体幹の動揺が挙げられる。このような跛行は中殿筋の筋力低下によるものが大きいが、長期間の逃避性の跛行が運動学習されたことにより、筋力が回復しても改善しにくいことが報告されている。逆に言えば筋力の改善が得られなくとも、正常歩行が痛みなく再学習できれば歩容の改善につながる可能性があり、このような現象は臨床的に数多く経験する。近年、本邦でも愛好者が急増しているノルディックウォーキング(以下、NW)は、2本のポールを交互に突く歩行形態で、歩行時の痛みの軽減や姿勢の改善が期待される歩行運動であるが、その医学的な効果の検証が十分なされていない。よって今回、変股症患者にNWを実施し、その際の体幹の動揺を検証することを目的に本研究を行った。【方法】 対象は新潟市近郊に在住の女性変股症患者18名(61.1±7.4歳)とした。全対象者に通常歩行と2本のポールを交互に突くNWを各二回実施し、その際の歩行速度と体幹動揺(側屈角度)を算出した。歩行距離は合計40歩分とし、定常歩行となった中間の20歩分の区間を解析対象とした。体幹動揺は3軸ジャイロ(加速度)センサー(MVP-RF8: MicroStone社製)を2個使用した。センサーを各々C7とL5に装着し、2個のセンサーの前額面上での相対角から左右方向の角度変化を求めた。今回は1歩行周期中の体幹の左右の振れ幅表現するために、左右の角度変化の絶対値の和を体幹側屈角度とした。なお、全ての対象者はNWの経験がなく、測定前に全日本ノルディックウォーク連盟が推奨しているJapanese Styleという方法に準じて指導を行い、十分練習を行った後計測を開始した。統計学的解析はSPSSを使用し、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には口頭と書面にて研究内容を説明し署名にて同意を得た.本研究は新潟医療福祉大学倫理委員会の承認を得て行った.【結果】 対象者の歩行速度は普通歩行時は75.4±15.1m/min、NW時は68.8±14.0m/minで、この時の体幹側屈角度は各々8.64±2.09度(5.52~11.74度)、7.85±1.89度(5.51~13.17度)であった。NW時は普通歩行時よりも歩行速度、体幹側屈角度とも有意に減少したが、速度と側屈角度には相関関係は認められなかった(p<0.05)。【考察】 今回、3軸加速度センサーを2個使用して、2種類の歩行時の体幹の側屈角度を算出した。その結果、NWは変股症患者の体幹の動揺を軽減する効果があることが明らかとなった。NWは近年本邦においても急激に愛好者が増えているスポーツで、杖を突くことでの免荷効果や酸素摂取量の増大、姿勢の改善効果などが期待されるためにリハビリテーションの分野でも取り入れられつつある。今回、NWの経験が無い変股症患者でも適切な方法に則ってNWを行うことで即時的に体幹の動揺を軽減させる効果が明らかになった。このような方法で縦断的に歩行練習を行えば、正常歩行に近い歩行形態での歩行練習が可能である。加えて杖を突くことでの免荷効果も得られるので、変股症患者にとって通常の歩行練習よりも歩行能力の改善に直結した運動療法であると考える。また、近年、簡便で比較的安価に購入できる加速度センサーを用いた歩行解析は臨床現場でも広く行われるようになったが、今回実施したような方法で体幹の側屈角度を算出している報告は少ない。今回の対象者の中には主観的に体幹動揺が大きい者とそうでない者がいたが、測定結果は検者の主観的な印象と非常にマッチしていたことから、今回の計測方法が臨床的な現象をある程度表現できていると考える。よって主観に頼らざるを得なかった歩容の評価を客観的に行うことができる簡便なツールとしてこのような機器が有用であることが示唆された。今後さらに計測方法を確立すべく、様々な対象者のデータを検証していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 NWは変股症患者の体幹の動揺を軽減させる効果があり、このような状態での歩行練習を繰り返すことで、姿勢の改善や歩行時の体幹動揺を軽減した歩行の獲得が期待できる。今回は変股症患者を対象としたが、歩行時に体幹動揺を伴う様々な疾患に対する新たな治療戦略につながる可能性がある。また、3軸加速度計を2個使用した体幹動揺の評価は臨床的にも簡便であり、有用な評価ツールであることが示唆された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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