理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-03
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ポスター発表
老齢期ラットの自発走運動が加齢性骨減少の軽減に及ぼす影響
髙橋 英明田巻 弘之與谷 謙吾菅原 和広桐本 光大西 秀明春日 規克
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抄録
【はじめに、目的】一般に中年期以降、加齢により骨量並びに筋量が減少し、運動量も低下する傾向にある。サルコペニアについては、高齢期の運動・トレーニングの実施によって筋断面積の増大や筋力向上などが、ヒト及び実験動物で報告されている。一方、オステオペニアについての報告は希少であり、特に老齢期の自発的運動が骨量減少の防止に有効であるか、また骨梁構造に及ぼす影響については定かではない。本研究では老齢期ラットの骨梁構造や筋組織などの形態的特徴を明らかにし、それらへの自発的運動刺激の効果を検討した。【方法】Fischer344 系雌性ラットを実験に用い、老齢期(2.5 年齢)まで飼育した後に運動群(Tr, n=8)及び非運動群(Cont, n=8)にグルーピングした。Tr群には飼育ゲージに設置して自由にアクセスできる回転車輪式運動負荷装置による自発走(wheel running)を10 週間実施した。平均走行距離は1470m/dayであった。運動期間終了後、麻酔下でヒラメ筋(Sol)及び長趾伸筋(EDL)を採取して筋湿重量を計測した。続いて灌流固定後に脛骨を採取して、骨長及び骨湿重量を計測し、小動物用μCT装置で撮影した。非脱灰標本に供した各組織サンプルは-180℃の液体窒素にて一旦凍結し、粘着フィルム法(Kawamoto & Shimizu, 2000)に準じ、4%カルボキシメチルセルロースゲルに浸漬して再度凍結包埋し、再度速やかに液体窒素中にて凍結した。脱灰標本に供したサンプルはエチレンジアミン四酢酸で脱灰し、パラフィン包埋した。各サンプルブロックからミクロトームもしくはクリオスタットで5 μmの薄切切片を作成し、ヘマトキシリン-エオシン(吉木法)、アザン及びシリウスレッド染色を施し、光学顕微鏡及び偏光顕微鏡にて観察した。また顕微鏡に設置したCCDカメラにて撮影した組織画像を画像処理ソフトにて筋並びに骨組織形態計測に供した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(日本学術会議, 2006)を遵守して、各研究機関の動物実験委員会の倫理審査の承認を得て実施した。【結果】Tr群の走行距離は自発走開始後4 週目までは平均1km/日であったが、その後漸時増加して平均最大距離は4km/日に至った。Cont群の老齢期ラットの脛骨骨幹端二次海綿骨の骨梁面積(%BA)は著しく低く、その骨梁構造も粗である特徴が観察された。また、顕微鏡にて撮影した骨組織像から、骨基質形成の指標となる類骨形成も弱いことが観察された。一方、Tr群ではCont群と比較して、%BAは有意に高く、類骨幅及び類骨面積も有意に高い値であった(P<0.05)。骨梁構造解析の結果、骨梁幅、骨梁長、骨梁周囲長についてはTr群で有意に増大したが(P<0.05)、骨梁数は有意な差はなかった。筋湿重量については、Contと比較してTr群ではSolは24%増加したが、EDLでは有意な変化は見られなかった。また、シリウスレッド染色にて同定された筋組織コラーゲン線維の断面積率はSolではTrにより2.2%有意に増加したが、EDLでは有意な変化は見られなかった。【考察】本研究の結果から、老齢期においても自発的な走運動により、筋量及び骨量の減少が軽減されることが示唆された。骨梁構造においては骨梁幅の減少軽減に有効であったが、骨梁数の減少を軽減することはできなかった。骨梁幅は骨表面における骨吸収と続く骨形成のバランスにより決定されるが、Tr群では類骨幅は大きく、老齢期の自発的な運動においても海綿骨における骨コラーゲンの形成に対してポジティブな影響を及ぼすのではないかと考えられた。一方、骨格筋の量的減少に自発的運動は有効であったが、抗重力的働きを有するSolにおいてはコラーゲン線維の増加割合が強まるのではないかと推測された。【理学療法学研究としての意義】老齢期の自発的運動が筋骨格系に及ぼす影響を組織学的に検証することは、サルコペニアやオステオペニアの予防改善に向けた運動療法プログラム作成に貢献する基礎的知見を提供する上で意義を有するものと思われる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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