理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-09
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ポスター発表
生体インピーダンス値によって高齢者の四肢筋量を推定する回帰式の作成
吉田 大輔阿南 祐也伊藤 忠島田 裕之牧迫 飛雄馬朴 眩泰李 相侖土井 剛彦堤本 広大上村 一貴鈴木 隆雄
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抄録
【はじめに、目的】加齢に伴う骨格筋量ならびに筋力の低下(サルコペニア)は、高齢期の生活機能を低下させる危険因子であり、サルコペニアを有する高齢者の早期発見と予防戦略の確立は、長寿大国である我が国にとって重要な課題である。健康診査など多数の高齢者を一度に対象とする筋量評価法の1つとして、最も普及しているのが生体電気インピーダンス法(BIA法)であり、近年はBIA法によって全身あるいは部位別の筋量が高い精度で推定できるようになった。しかしながら、このような筋量の推定に用いられる計算式には集団特異性があり、欧米人や若年者データを基に作成された既存の推定式は、日本人高齢者の筋量評価に適さない可能性がある。本研究では、日本人高齢者の四肢筋量(ASM)を二重エネルギーX線吸収法(DXA法)とBIA法で測定し、筋量測定の標準として用いられているDXA法による値を、簡便に測定可能なBIA法により推定する回帰式を作成し、その妥当性と測定精度を検討した。【方法】65歳以上の地域在住高齢者250名(男性141名、女性109名;平均73.5歳)を対象として、DXA法による身体組成の評価と、BIA法による全身ならびに部位別のインピーダンス値の計測を同時期に行った。使用した機器は、DXA法がQDR-4500A(Hologic社)、BIA法が多周波体組成計MC-980A(TANITA社)で、DXA法による計測は熟練した同一の放射線技師によって実施された。そして、DXA法で計測されたASMを従属変数、インピーダンス値(50Hz)を身長の2乗で除した値(impedance index)と体重、年齢、性別を独立変数とした重回帰分析(強制投入法)を用いて、BIA法の測定結果からASMを推定する回帰式を作成した。ASM推定式の交差妥当性はdouble cross-validationと対応のないt-検定を用いて検討し、ASM推定式の推定誤差はBlad-Altman分析を用いて確認した。すべての統計解析は有意水準を5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認とヘルシンキ宣言を遵守して実施した。また、対象者には書面と口頭にて研究の目的・趣旨を十分に説明し、研究に対する参加の同意を得た。【結果】まず、対象者を2群に分けて各群でASM推定式を作成した。double cross-validationを適用した結果、いずれの群においてもDXA法による実測値と推定値がほぼ同値を示し、両者の間には有意差を認めなかった(p > 0.05)。また、実測ASMと推定ASMをそれぞれy軸とx軸の平面上にプロットした回帰直線の傾きと切片は、いずれもidentitypline(y = x)と極めて近似していた。そのため、最終的なASM推定式はすべての分析対象者(250名)のデータを基に作成され、その回帰式は以下のとおりとなった。ASM = 0.204 ×(impedance index)+ 0.146 ×(体重)- 0.031 ×(年齢)+ 1.717 ×(性別: 男性= 1、女性= 0)+ 2.215。この回帰式の決定係数と標準推定誤差は、それぞれ0.94と0.93で、Blad-Altman分析の結果、ランダム誤差や比例誤差などの明らかな系統的誤差は認められなかった。【考察】サルコペニアを判定するためには、正確な筋量評価が不可欠である。大規模集団を対象としてサルコペニアをスクリーニングする場合は、非侵襲で簡便性や可搬性にも優れた筋量の評価方法が求められる。BIA法はこれらの要件を満たしており、今回作成されたASM推定式を併用することによって、日本人高齢者のASMが高い精度で推定できることが明らかとなった。過去に報告されているASM推定式の決定係数(0.70-0.97)と比較しても、今回作成されたASM推定式の説明力は同等かそれ以上であり、サルコペニアを有する高齢者のスクリーニングとして有益性が高いと考えられる。今後は、作成したASM推定式の予測妥当性についても検討する必要があるだろう。【理学療法学研究としての意義】本研究の成果は、医療、保健、介護分野における身体組成の評価、とりわけサルコペニア判定に有益な知見であり、サルコペニアを有する高齢者が簡便に同定できるようになれば、その実態や予防策の重要性を示唆する知見がさらに蓄積されるであろう。
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© 2013 日本理学療法士協会
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