臨床リウマチ
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誌上ワークショップ 関節リウマチ治療でのバイオマーカー
新しいバイオマーカーによる関節リウマチの疾患活動性評価
藤本 穣仲 哲治
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2020 年 32 巻 1 号 p. 75-80

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抄録

 疾患活動性を評価するにあたり,客観的・定量的な指標として血清バイオマーカーを使用する意義は大きい.以前からリウマチ疾患の活動性評価に使用されるCRPは,炎症時に肝臓で産生される急性期蛋白であり,その発現上昇にはサイトカインIL-6の刺激が必要である.近年,IL-6シグナルが標的となるバイオ製剤等が実用化され,IL-6阻害下で常に低値となるCRPでは,疾患の増悪や感染症の合併などの検出が難しいことが明らかになった.これらの製剤の使用頻度が増す中,新たなバイオマーカーが求められている.以前われわれは,新規炎症マーカー探索を目的としてプロテオミクス解析を行い,関節リウマチ患者血清で上昇する糖蛋白LRG(Leucine rich α2 glycoprotein)を同定した.LRGはCRPに似た急性期蛋白の性質をもち,肝臓にて産生され,炎症性サイトカイン刺激で発現が増加する.しかもLRGは,IL-6以外にIL-1β,TNF-αやIL-22などのサイトカイン刺激でも誘導され,炎症部位においても発現が上昇するなど,CRPとは異なる特徴をもつ.われわれのグループでは,トシリズマブ使用中の関節リウマチの疾患活動性や,潰瘍性大腸炎の粘膜病変など,CRPで評価が困難な状況でもLRG測定が有用との結果を得ている.企業連携の成果によりLRG測定系が実用化済みであり,今後,リウマチ診療における活用が期待される.

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© 2020 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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