臨床リウマチ
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32 巻, 1 号
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誌説
総説
  • 房間 美恵, 中原 英子, 金子 祐子, 竹内 勤
    2020 年 32 巻 1 号 p. 6-12
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/22
    ジャーナル フリー

     2012年に関節リウマチを含む炎症性関節炎患者の管理における看護師の役割についてのEULARリコメンデーションが発表され,各国で実践を促す努力が行われたが,リコメンデーションに対する合意レベルは高いものの実践が十分でないことが示されていた.

     今回,より高いレベルのエビデンスと新たな知見を組み入れた2018年改訂版が発表された.改訂版では,前回にはなかったOverarching principleが追加され,リウマチ看護師はヘルスケアチームの一員であること,エビデンスに基づくケアを行うべきであること,そして,リウマチ看護は患者との共同意思決定に基づくこと,の3項目が明記されている.

     リコメンデーションは8項目で,最初の3項目は患者の観点から,残り5項目は看護師の観点から表現されている.患者は病気の全経過中,知識の習得や疾患管理などニーズに応じた支援について看護師に相談することが推奨され,遠隔医療も含まれる.また,看護師は,総合的な疾患管理への参画だけでなく,患者が自己管理技術を習得し自己効力感を高められるように心理社会面を含め支援を行うこと,さらに,看護師自身の知識や技術の維持向上のために継続的なリウマチ専門教育を受け,より幅広い役割を担うことが求められている.改訂版のEULARリコメンデーションが多岐に渡るリウマチ看護の指針となり幅広く実践されるよう望まれる.

原著
  • 黒澤 陽一, 坂井 俊介, 伊藤 聡, 岡林 諒, 阿部 麻美, 大谷 博, 中園 清, 村澤 章, 石川 肇, 長谷川 絵理子, 小林 大 ...
    2020 年 32 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/22
    ジャーナル フリー

    【目的】レミチェックQ®はインフリキシマブ(IFX)血中濃度を1.0μg/mL以上か未満であるか定性的に調べることができるキットである.関節リウマチ(RA)でIFXを投与している患者群でレミチェックQ®を使用しIFXの血中濃度を推定し,実臨床におけるIFX血中濃度と疾患活動性の関連について検討を行った.

    【対象・方法】2017年10月から2018年4月の期間で,新潟県立リウマチセンター通院中のRA患者でIFXを投与されレミチェックQ®の検査を施行された57例を対象とした.検査施行時の患者背景,疾患活動性,IFX投与量等を横断的に解析した.

    【結果】レミチェックQ®陽性群が44例(77%)であった.陰性群では陽性群と比較しIFX投与量は有意に少なかった(6.8±2.6mg/kg vs. 5.1±2.4mg/kg, p=0.032).DAS28-ESR(2.67±1.13 vs. 2.48±0.44, p=0.775)では有意差はなかったがCDAI(6.6±6.5 vs. 3.1±2.7, p=0.049),SDAI(6.9±6.8 vs. 3.2±2.7, p=0.048)は陰性群で有意に低かった.陰性の13例では全例でDAS28-CRPで寛解を達成し5例でBoolean寛解も達成していた.

    【結論】レミチェックQ®陰性群では陽性群と比較し疾患活動性が良好な症例が集積していた.これは,レミチェックQ®陰性群に,TNF製剤への反応性が良い症例が多く存在していた可能性が一因として考えられる.今後は,IFX開始早期に治療効果不十分な症例でレミチェックQ®を測定しその有用性を検討する必要がある.

  • 髙邑 小百合, 篠田 晃一郎, 多喜 博文
    2020 年 32 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/22
    ジャーナル フリー

    【目的】関節リウマチ(RA)患者満足度評価尺度として,1992年にJ. Hillらによってリード満足度調査票(LSQ)が開発されたが,本邦では未だLSQを使用した調査報告がない.今回LSQを日本語に翻訳し満足度調査を行った.同時に疾患活動性を調査し満足度への影響因子を検討した.【方法】2014年10月1日から3か月間に当院を受診したRA外来患者401名を対象とした.2015年7月27日から同年9月31日にかけて,自宅に無記名自記入式質問票を郵送し調査した.質問票は,患者属性,日本語版LSQ,疾患活動性(MDHAQ-RAPID3)の3部構成とした.【結果】有効回答率は47.4%だった.LSQを構成する6つのグループ(「全般的満足度」,「情報提供」,「患者への共感」,「医療の質と能力」,「患者に対しての態度」,「出入りしやすさと継続しやすさ」)全てにおいて5点満点中3点以上を獲得した.最も高い満足度を示したグループは「医療の質と能力」であり,最も低い満足度は「患者への共感」次いで「患者に対しての態度」であった.重回帰分析の結果,これら3つのグループに加え「出入りしやすさと継続しやすさ」のグループで,PtGA(患者全般評価)が最も満足度に影響を与える因子であることが明らかとなった.【結論】当院RA外来患者の満足度は高く,特に「医療の質と能力」には高い評価が得られたが,「患者への共感・態度」には改善が必要である.また,PtGAが低いほど満足度が高いことがわかった.

  • 大橋 利也
    2020 年 32 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/22
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:以下RA)による症状から趣味が行えなかった症例に対し,症状に対するセルフマネジメント能力の獲得を目的に手帳を用いた活動量の調節を提案した.手帳には症状の強さを記載し,手帳をもとに作業療法士と活動量の調節方法を相談した.介入1年後,症状に合わせた生活が可能となり趣味が再開できた.手帳の使用はセルフマネジメント能力の獲得に有用であると考えられる.

  • 浅野 諒子, 多喜 博文, 戸邉 一之, 伊藤 聡, 東谷 佳奈, 中園 清, 村澤 章, 石川 肇, 小林 大介, 長谷川 絵理子, 成田 ...
    2020 年 32 巻 1 号 p. 35-47
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/22
    ジャーナル フリー

    【目的】アログリプチンのステロイド糖尿病における有効性,自己免疫性疾患領域での安全性につき検討する.【方法】新潟県立リウマチセンターでプレドニソロン(PSL)使用中の自己免疫疾患患者で,2011~2017年10月末までにアログリプチンを使用された患者を対象に後ろ向き観察研究を行った.欠損値はLOCF法で補完しWilcoxon signed-rank検定で解析した.【結果】74名が解析対象となり,アログリプチン開始から24週後にHbA1cは有意に低下していたがPSL投与量も有意に低下していた.PSL・糖尿病薬投与量が一定だった患者からなる群(n=57)でもHbA1cは24週後に有意に低下していた.PSL・抗リウマチ薬投与量が一定であった関節リウマチ(RA)患者からなる群(n=22)では,観察期間中の疾患活動性に有意差はなく,関節痛悪化による脱落はなかった.2例で関節炎悪化と主治医に判断されていたが,いずれもアログリプチンの中止には至っていなかった.【総括】関節リウマチ症例ではアログリプチン投与後の関節炎悪化を念頭に関節所見の追跡が重要と考えられた.

  • 針金 健吾, 持田 勇一, 島崎 貴幸, 小林 直実, 稲葉 裕
    2020 年 32 巻 1 号 p. 48-56
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/22
    ジャーナル フリー

    【目的】ゴリムマブ(GLM)はその臨床効果や長期安全性が報告されている一方,当施設での初期導入例,特に50mg開始例では効果不十分例も散見されたため,開始用量別の臨床効果について調査した.

    【方法・対象】2011~2018年にGLM投与を開始し,3ヵ月以上経過観察可能であった 関節リウマチ72例(平均67.7歳)を対象とした.患者背景とDAS28-ESR(DAS)の推移を開始時の投与量別(50 mg群,100 mg群各36例)に調査した.

    【結果】投与開始時のメトトレキサート併用率は50 mg群83.3%,100 mg群47.2%と50 mg群で有意に高く,平均用量はそれぞれ8.3 mg,7.2 mg/週で差が無かった.プレドニゾロン併用率は50 mg群58.3%,100 mg群52.7%,平均用量はそれぞれ4.4 mg,4.2 mg/日で差が無かった.投与開始時のDASは50 mg群3.80,100 mg群4.12と差を認めなかった.投与後12週,24週でのDAS寛解率は50 mg群54.9%,42.3%で100 mg群64.6%,73.9%であった.12週,24週におけるDAS変化量は50 mg群-0.75,-1.22で100 mg群は-1.48,-1.26と,12週で両群間に有意差を認めた.

    【結論】投与後12週,24週におけるDAS寛解率,DAS変化量の結果から100 mg投与群が50 mg投与群に比べ早期から有効性を示す可能性が示唆された.

誌上ワークショップ 集学的治療によるT2Tを多面的に再考する
  • 亀田 秀人
    2020 年 32 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/22
    ジャーナル フリー

     関節リウマチにおいて,疾患のリスクを総合的に評価し,一定の期間内に低リスク状態に到達させる目標達成型の治療(treat to target; T2T)という考え方が普及し,脊椎関節炎や全身性エリテマトーデスにも広がっている.しかし,画一的な疾患活動性の評価が患者の多様性に十分対応せず,概念と実践の普及の間には乖離が見られる.超高齢社会における臨床評価,生物学的製剤の血中トラフ濃度測定など,T2Tには新たな課題も生じており,多職種が連携したチーム医療の必要性がこれまで以上に高まっている.

  • 林 正春, 安田 勝彦
    2020 年 32 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/22
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(以下RA)において,「基礎療法」「薬物療法」「手術療法」「リハビリテーション」は治療の4本柱とされている.近年,生物学的製剤(以下Bio)の導入で,薬物療法の位置づけが大きくなる.その一方で,寛解から重度障害まで病態像が多様化し,リハビリテーション技法についても多面的に再考する必要がある.関節リウマチ治療ガイドライン2014では,関節リウマチの治療に運動療法と作業療法(以下OT)によるリハビリテーションは推奨されている.装具療法,リハビリテーションにおいても,RA治療の基本原則である「目標達成に向けた治療」(Treat to Target: T2T)への支援に向けた取り組み,アウトカム,そして,その可能性を発信することが重要と考える.本稿では,OTの具体的支援となる①スプリント作製②自助具作製③上肢ROM治療④ホームエクササイズ指導の解説,及び,国が進める地域包括ケアシステム構築におけるRAリハビリテーションの課題と対策について述べる.

誌上ワークショップ 関節リウマチ治療でのバイオマーカー
  • 大村 浩一郎
    2020 年 32 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/22
    ジャーナル フリー

     バイオマーカーを測定する意義は,より正確な診断,正確な活動性評価,予後予測評価,疾患分類などがあるが,血清中の自己抗体やサイトカイン,細胞表面マーカー,ゲノムデータ,遺伝子発現,miRNA,メタボロームなどが用いられうる.抗CCP抗体はRAの特異的診断マーカーであるが,膠原病ではしばしば陽性になるため注意が必要である.また,RFと組み合わせて4群に分類することで骨破壊の予後予測にも有用である.特に抗CCP(-)RAで有用である.MMP-3はRA診断にはあまり有用ではないが,骨破壊を予測するマーカーとしては有用である.抗CCP抗体も骨破壊を予測するよいマーカーであるが,CCP(+)RAのなかでもHLA-DR13をもつと骨破壊が軽くなるとする報告があるため,我々のコホートで調査した結果,CCP(+)HLA-DR13(+)患者には10年以上経ても全く骨びらんがみられない一群があることが判明し,一方,非常に長期RAを患った患者ではやはり骨破壊は強くなることが示された.HLA-DR13は関節破壊の少ないRAを予測するよいバイオマーカーとなる可能性はあるが,より洗練されたバイオマーカーが望まれる.

  • 藤本 穣, 仲 哲治
    2020 年 32 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/22
    ジャーナル フリー

     疾患活動性を評価するにあたり,客観的・定量的な指標として血清バイオマーカーを使用する意義は大きい.以前からリウマチ疾患の活動性評価に使用されるCRPは,炎症時に肝臓で産生される急性期蛋白であり,その発現上昇にはサイトカインIL-6の刺激が必要である.近年,IL-6シグナルが標的となるバイオ製剤等が実用化され,IL-6阻害下で常に低値となるCRPでは,疾患の増悪や感染症の合併などの検出が難しいことが明らかになった.これらの製剤の使用頻度が増す中,新たなバイオマーカーが求められている.以前われわれは,新規炎症マーカー探索を目的としてプロテオミクス解析を行い,関節リウマチ患者血清で上昇する糖蛋白LRG(Leucine rich α2 glycoprotein)を同定した.LRGはCRPに似た急性期蛋白の性質をもち,肝臓にて産生され,炎症性サイトカイン刺激で発現が増加する.しかもLRGは,IL-6以外にIL-1β,TNF-αやIL-22などのサイトカイン刺激でも誘導され,炎症部位においても発現が上昇するなど,CRPとは異なる特徴をもつ.われわれのグループでは,トシリズマブ使用中の関節リウマチの疾患活動性や,潰瘍性大腸炎の粘膜病変など,CRPで評価が困難な状況でもLRG測定が有用との結果を得ている.企業連携の成果によりLRG測定系が実用化済みであり,今後,リウマチ診療における活用が期待される.

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