抄録
リン酸八カルシウム[Ca8H2(PO4)6・5H2O,以下OCPと略す]をddY系雄性マウスの両大腿部筋膜上に3週間インプラントした.また,OCP粉末を37°Cに保持した人工体液および1% NaCl溶液中に,1日,1週間,3週間浸漬した.所定期間経過後,試料は走査型電子顕微鏡,X線回折,赤外分光分析により状態分析した.X線回折の結果より,マウスに3週間インプラントしたOCPはすべて結晶性の低いアパタイトに転化していた.また,1% NaCl溶液中に浸漬したものではアパタイトに転化していた.赤外分光分析結果より,これらのアパタイトには炭酸が含有されていた.一方,人工体液中に浸漬したものではOCPはほとんど変化しなかった.これは,人工体液中のMgイオンがOCPからアパタイトへの相変態を遅延しているためと考えられる.