Dental Materials Journal
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11 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 木次 朝日, 奥野 攻, 中野 毅, 浜中 人士, 黒田 敬之
    1992 年11 巻2 号 p. 119-129,217
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    小型で強力な希土類系磁石は,歯科補綴や矯正の装置に用いられるようになってきた.このような応用を考える上で希土類系磁石の口腔内環境下で吸引力の変化と腐食について明らかにしておく必要がある.そこでNd2Fe14B磁石およびSmCo5磁石を37°Cの1%塩化ナトリウム水溶液,1%乳酸水溶液,0.05%塩酸水溶液,0.1%硫化ナトリウム水溶液,人工唾液に浸漬させ,吸引力の経時的変化,イオン溶出,重量変化,アノード分極特性を調べた.またステンレス鋼に磁石を入れレーザー溶接により密封された磁性アタッチメントの耐食性を調べた.密封されていない希土類系磁石の耐食性は不良であった,特に1%乳酸水溶液中では,激しく腐食され,吸引力も低下し溶出イオン量も多かった.磁性アタッチメントの耐食性は良好であり,レーザー溶接を行ったステンレス鋼のカプセルは防錆効果があると考えられた.
  • 伴 清治, 神出 敏影, 長谷川 二郎
    1992 年11 巻2 号 p. 130-140,217
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    リン酸八カルシウム[Ca8H2(PO4)6・5H2O,以下OCPと略す]をddY系雄性マウスの両大腿部筋膜上に3週間インプラントした.また,OCP粉末を37°Cに保持した人工体液および1% NaCl溶液中に,1日,1週間,3週間浸漬した.所定期間経過後,試料は走査型電子顕微鏡,X線回折,赤外分光分析により状態分析した.X線回折の結果より,マウスに3週間インプラントしたOCPはすべて結晶性の低いアパタイトに転化していた.また,1% NaCl溶液中に浸漬したものではアパタイトに転化していた.赤外分光分析結果より,これらのアパタイトには炭酸が含有されていた.一方,人工体液中に浸漬したものではOCPはほとんど変化しなかった.これは,人工体液中のMgイオンがOCPからアパタイトへの相変態を遅延しているためと考えられる.
  • 西村 文夫, 中村 英雄, 亘理 文夫, 田中 至, 高橋 英和
    1992 年11 巻2 号 p. 141-149,217
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ステンレス鋼製スクリューを測定試料に埋め込み,スクリューと測定試料に繰り返し引張力を与える引張疲労試験を考案した.試験試料としてPMMA棒を選び,これにネジきりをし,スクリューを歯科用セメントで合着した試料と合着しない試料を製作した.負荷波形としてサイン波,矩形波,三角波について検討した.PMMA試料を用いたため,亀裂の発生が観察でき,亀裂発生までの繰り返し応力回数と,試料の破断までの回数を記録した.破断面を観察したところ,破壊疲労を示す表面性状が観察された.負荷波形としては,測定値の変動係数が小さい三角波形の負荷が望ましいと考えられた.疲労強度はセメント合着により改善され,セメントの種類によりその程度は異なった.しかし,亀裂発生から破壊までに与えられた繰り返し応力の回数はセメントの種類の影響を受けなかった.
  • 原嶋 郁郎, 鵜澤 崇, 平澤 忠
    1992 年11 巻2 号 p. 150-156,218
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    辺縁封鎖性評価のための新しい試験装置を開発した.この試験装置は熱サイクル負荷のための流路と漏洩検出のための流路からなっており,両流路は被験修復歯で隔絶される.熱サイクル負荷系にはトレーサーとして使用したローダミンBの冷熱水溶液を循環させておき,6つの電磁弁の開閉で試験片に熱サイクルを与えられる.試験片に熱サイクルを与えながら,検出系を循環する蒸留水中に漏洩してくるトレーサー量を定期的に分光光度計で測定した.銀合金インレー修復,アマルガムあるいはグラスアイオノマー充填修復について漏洩データを実験式で解析したところ,漏洩挙動をかなりよく説明でき,熱サイクルに対する完全封鎖保持期間として辺縁封鎖性を推定評価できた.
  • 米山 隆之, 土居 寿, 浜中 人士
    1992 年11 巻2 号 p. 157-164,218
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Ni-Ti合金鋳造体の機械的性質および変態点に及ぼす組成およびチタンの純度の影響について,引張試験および示差走査熱量測定により検討した.鋳造用インゴットの組成は,チタンの原子パーセントで49.0から49.2%とし,比較的純度の高い3種類のチタンを材料として使用した.
    その結果,Ni-49.0Tiはやや脆い性質を示し,Ni-49.2Tiは低い見かけの耐力および高い伸びを示した.残留ひずみは,チタンの組成が高くなるほど増加した.また,チタンの純度のわずかな低下が,Ni-Ti合金の機械的性質および変態点に影響を及ぼした.すなわち,変態点が下がることにより,見かけの耐力が高くなり,残留ひずみが小さくなり,伸びが減少した.
  • 平野 進, 平澤 忠
    1992 年11 巻2 号 p. 165-176,218
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    フィラー含有量の異なるコンポジットレジンを作製し,その圧縮クリープと回復について水中浸漬下で研究した.500時間後のコンポジットレジンのクリープひずみはコンポジットレジン中のフィラー含有量の増加にともない直線的に減少した.
    試験期間中のコンポジットレジンの吸水量は一般には圧縮応力の増加に従い減少するが,フィラー量の多いコンポジットレジンではある応力範囲ではほとんど吸水量が一定となった.
    コンポジットレジンのクリープ試験後の回復現象は試験直後に著しく大きかった.この期間における吸水量の測定結果から,クリープ試験中にマトリクスとフィラー界面ないしはマトリクス中にミクロクラックが発生し,試験後に応力が取り除かれるとその間隙に水分が浸透する.このため回復期にコンポジットレジンの吸水量が増加するものと思われた.
  • 野本 理恵, 平澤 忠
    1992 年11 巻2 号 p. 177-188,219
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    コンポジットレジン硬化体から切り出した薄切片の微小部位におけるIRスペクトルを顕微赤外測定装置を組み込んだFTIRを用いて測定し,未反応二重結合量(UDB)を求めた.さらにこの薄切片から残留モノマーを溶出させた後の同一部位でのIRスペクトルをも測定し,ペンダント二重結合量(PDB)を求めた.また,この両二重結合量の差から溶出した二重結合量(EDB)を求め,残留モノマー量を推定した.
    UDB, PDB, EDBともに深さ方向に対して著しく変化した.PDBは光照射時間にかかわらず,得られた硬化深さの7∼8割の深さまで,一定の値を示した.この部分におけるコンポジットはより密に架橋されていると推察される.モノマー組成によって異なるが,光重合された硬化体内には25∼40%の二重結合がペンダント二重結合として存在することが示唆された.
  • 深瀬 康公, 斉藤 仁弘, 掛谷 昌宏, 大橋 正敬, 西山 實
    1992 年11 巻2 号 p. 189-196,219
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    4種市販品,ペースト・ペーストタイプ覆髄用セメントおよびヒト象牙質の熱的性質についての測定を行った.測定はキセノンランプ・フラッシュ法による非定常法により行い検討した.全てのセメントにおいて熱伝導率は,象牙質と同等か,それ以下の値であった.また,この値から1mmのセメントの厚さを象牙質の厚さに換算すると,0.97∼2.10mmに相当し,象牙質よりも熱刺激の遮断性が同等もしくは優れていることが判明した.
  • Toshiko MORI, Graham THOMAS, Robert MARKHAM, Paul WHITE
    1992 年11 巻2 号 p. 197-203,219
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    マイクロ波による加熱を利用する際には,得られる温度を知るとともに温度調節のできることが望ましい.そのための第一歩として,マイクロ波の発振を行なうマグネトロンの出力が一定で照射時間を変化させる従来の方法と,マグネトロンの出力を変化させる方法を比較した.32秒のサイクルを有する500Wの家庭用電子レンジを用い,同様の照射エネルギーが発生していると考えられる条件(50W, 10%)を設定した.50mlの水道水を加熱した場合,どちらの方法でも沸騰に要する時間は10分であったが,後者の方法でなめらかな曲線が得られた.これは,従来の方法では,短時間(3秒)のマイクロ波照射中に500Wのエネルギーが放出され残りの29秒はマグネトロンが停止しているのに対し,本方法では,低いエネルギーが停止することなく照射されていることによる.
    700Wの家庭用電子レンジによる消毒液及び組織固定液の実験も追加したところ,一定の低出力を得ることの必要性が示された.熱電対とマイクロ波発振回路を結ぶことにより温度調節が可能となる.
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