応用生態工学
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原著論文
三春ダムにおけるフラッシュ放流によるダム下流河川の環境改善について
小部 貴宣浅見 和弘大杉 奉功浦上 将人伊藤 尚敬
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2005 年 8 巻 1 号 p. 15-34

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抄録
本研究は,フラッシュ放流が河床へもたらす効果について,デトリタスの掃流,付着藻類の剥離に関する調査に加え,浮石割合,河床の透水性の調査など総合的に検証した.現地調査の結果,フラッシュ放流による効果は河床の撹乱,それに伴う浮き石割合の増加,河床の透水性の向上,藻類生育量の指標となるクロロフィルa量の減少,よどみに溜まった有機物の掃流などが示唆された.透水性に対して効果が確認されたフラッシュ放流量は20m3/sで,水理計算による断面平均流速は1.1-1.8m/sであった.また,河床の透水性と河床構成材料の粒度との関係は,0.850mm未満の粒径が増加すると透水性が低下し,2-26.5mmの粒径が増加すると,透水性が向上するという結果が得られた.付着藻類に対して効果が確認されたフラッシュ放流量は10m3/sで,断面平均流速は1.5m/s程度であった.本研究結果と既往文献からの知見を踏まえると,フラッシュ放流に期待できる効果は,付着藻類の剥離·更新,河床構成材料中に産卵する魚類の産卵環境の改善,水生昆虫の生息環境改善,付着藻類及び水生植物の生育環境改善等が示唆された.
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© 2005 応用生態工学会
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