応用生態工学
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総説
河川の土砂動態が有明海沿岸に及ぼす影響について
—白川と筑後川の事例—
横山 勝英
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2005 年 8 巻 1 号 p. 61-72

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抄録
河川は沿岸域に土砂や栄養塩,金属類などの様々な物質を輸送するが,特に土砂は地形形成要因になると同時に,栄養塩等の物質を運搬する.また,有明海のような内湾では河川から供給される土砂のほぼ全量が堆積するため,内湾の環境を考える上では河川の土砂動態を考慮する必要がある.有明海の容積が340億 m3であるのに対して,河川の淡水供給量は80億 m3と高い割合を占める.このうち筑後川は45%を占め,さらに土砂供給量は86%を占めると推測されるため,有明海の環境に対する河川の役割は大きく,特に筑後川の存在は重要である.そこで,白川と筑後川における粒径別の土砂動態を経年的に整理して,沿岸域や干潟の環境変化の原因と対策について考察した.流域での土砂生産状況の変化を知るために,明治以降の森林面積の経年変化,浮遊砂輸送量と河床変動の経年変化を調べた結果,森林は増加し河川の流砂量が減少していたことから,阿蘇—久住山塊では土砂生産量が減少していると推察された.河道の土砂移動状況を把握するために,筑後川の過去50年間の河床変動履歴と河川改修,砂利採取,ダム堆砂による砂の持ち出し量を整理したところ,これらの量は概ね一致した.また,自然の供給量を大幅に上回る土砂が河道から持ち出されたことが分かった.白川河口域において洪水時の土砂供給量と平常時の土砂移動量を1年間にわたって観測した結果,洪水時に土砂が堆積して干潟が前進し,平常時には潮汐作用によってシルト·粘土成分が侵食されて河道内に逆流·堆積していることが分かった.平常時の逆流堆積量は年に数回発生する洪水が輸送する土砂量と同程度であった.以上の結果から,筑後川では海域への砂の供給量が激減している可能性があり,これにともない河口域ではシルト·粘土の堆積が進行している可能性があることが示された.
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© 2005 応用生態工学会
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