主催: 阿萬 裕久, 天㟢 聡介
会議名: 第32回ソフトウェア工学の基礎ワークショップ(FOSE2025)
開催地: 愛媛県松山市
開催日: 2025/11/06 - 2025/11/08
p. 111-116
本研究は,ストランド空間モデルを用いて,ブロックチェーンにおけるProof of Work(PoW)の完全性を形式的かつ抽象的に記述・検証する新たな枠組みを提案する.従来のPoWの安全性評価は,計算論に基づく定量的手法に依存してきた.これらの手法は,複雑かつ詳細なモデルを特徴とし,特定の前提や数値条件によって制約される.しかし,PoWが完全性を満たすことを示すためには,具体的な値に依拠せずに定性的な表現を与えることで十分であるはずである.そこで本研究では,PoWにおける本質的な操作,すなわちトランザクション生成,パズル生成,計算努力,および検証に着目し,これらの要素を因果的につながる記号的な構造として表現することで,PoWプロトコルが完全性を満たす仕組みを定性的に捉える.特に,計算努力を拡張メッセージとして導入し,その十分性をアスタリスク記号によって表現することにより,マイナーの行動が完全性にどのように影響するかを形式化する.本モデルは,正当なマイナーが多数を占める場合には完全性が保証され,不正なマイナーが支配的な場合には改ざんが可能となり得ることを示す.本研究は,PoWの安全性に関する構造的な理解を提供し,将来的な機械的検証や自動解析手法への基盤を築くものである.