2026 年 68 巻 6 号 p. 1150-1156
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)患者に対する大腸サーベイランスでは,内視鏡所見と病理診断が必ずしも一致しない場面が少なくない.本稿では,こうした齟齬が診断精度の問題ではなく,炎症性発癌という特有の病態を従来の枠組みで理解しようとしてきたことに起因する点を整理した.IBD関連dysplasiaは,腺腫-癌連続説とは異なる発癌過程を背景に生じ,形態学的にも多様である.Riddell分類に加え,conventional / non-conventional dysplasiaの概念や,SCENICコンセンサス・ステートメントを踏まえ,病理診断の役割を「起源の鑑別」ではなく,dysplasiaの有無とグレードを適切に評価し,内視鏡所見と統合する情報提供として再定義する必要性を論じた.