2017 年 25 巻 p. 22-25
グラフェン量子ドット(GQD)は,量子閉じ込め効果やエッジ効果に起因した光学的・電気的特性からナノエレクトロニクスにおいて注目されている.しかしながら,これまでのカーボン材料を化学的,あるいは物理的に破壊するGQDの作製方法では,GQDの大きさや構造の制御が困難である.そこで,清浄表面を有するニッケル(Ni)ナノ粒子をテンプレート触媒として用いて,アモルファスカーボン(a-C)をグラファイト化することにより,ナノグラフェンの作製を試みた.Niナノ粒子上に室温で蒸着したa-C薄膜のラマン分光スペクトルには,GとDモードに対応する二つのピークが1582 cm–1と1388 cm–1にそれぞれあらわれた.透過電子顕微鏡法観察から,Niナノ粒子のまわりにのみ乱れた炭素原子層が熱処理を行っていないにもかかわらず自発的に形成していることがわかった.今回の結果から,Niナノ粒子の清浄表面は,高い触媒能を示し,a-Cのグラファイト化温度を低下させることが示唆された.