2018 年 26 巻 p. 36-40
磁気ハイパーサーミア(磁気温熱療法)は誘導加熱特性をもつ磁性ナノ粒子を用いたがん治療法であり,がん組織に集積させた磁性ナノ粒子を交流磁場により加熱し,正常細胞よりも熱耐性の低いがん細胞のみを死滅させる.したがって,磁気ハイパーサーミアでは磁性ナノ粒子の誘導加熱の制御が極めて重要である.そこで本研究では,優れた生体適合性と誘導加熱特性をもつマグネシウム亜鉛フェライトを磁性ナノ粒子のモデルに用い,その粒子径と磁性流体における凝集・分散が誘導加熱に及ぼす影響について実験的および数値的に検討した.その結果,クエン酸イオンと非イオン性界面活性剤を含むマグネシウム亜鉛フェライト磁性流体は3以下のpHでナノ粒子の凝集が生じ,分散状態に比べて発熱の低下が見られたことから,誘導加熱の制御では磁性ナノ粒子の粒子径だけでなく凝集・分散状態が重要な操作因子であることがわかった.