2018 年 26 巻 p. 66-72
近年,空間対称性の破れた新奇HfO2極性相が発見され,非鉛かつ非ペロブスカイト型構造の新奇強誘電体材料として注目されている.Hf0.5Zr0.5O2(HZO)は,薄膜状態において広いHf/Zr組成域で空間群Pca21の直方晶準安定相を形成しうることが知られるが,配向制御した試料を使った結晶構造や微細組織の知見が皆無である.本研究では,基板による弾性的拘束に起因する自己弾性場を利用して,イオンビームスパッタリング法と急速加熱法を利用した固相エピタキシーによりHfO2–ZrO2固溶体薄膜のエピタキシャル成長に初めて成功し,最先端の収差補正電子顕微鏡を活用して薄膜中のナノ組織,直方晶相や共存する単斜晶相のドメイン構造を明らかにし,固溶効果と弾性的拘束効果の二つの効果が直方晶相の相安定性向上に不可欠であることを明らかにした.