2019 年 27 巻 p. 63-69
ハイスループットスクリーニングやコンビナトリアルケミストリーに代表される効率的な新規化合物探索手法の発展に伴い,難溶性薬物の数も急激に増加している.これらの背景から,医薬品開発において,難水溶性薬物のバイオアベイラビリティ(BA)改善技術が近年非常に重要視されている.本研究では薬物結晶多形の探索とナノテクノロジーによる粒子制御を組み合わせることにより,これら課題の改善を試みた.その結果,医薬品シロスタゾール(CLZ)の結晶多形を製造することに成功し,これら結晶多形の違いがナノ結晶製剤製造時の粒度分布・安定性に関与することを見出した.また,粒子径48 nmのCLZナノ結晶粒子を主とする口腔内崩壊(OD)錠を作成し,本製剤が粉末粒子からなるOD錠に比べBAが約2倍高値であり,脳虚血治療へ有用であることを明らかとした.以上,結晶多形化とナノ結晶化技術を融合した手法を提案するとともに,ナノ結晶OD錠の応用性を示した.