日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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特集:急性虫垂炎の治療方針の変遷と現状
小児急性虫垂炎の治療方針
─手術適応症例に対する待機的腹腔鏡下虫垂切除術(Interval laparoscopic appendectomy)の現状について─
大滝 雅博二瓶 幸栄鈴木 聡三科 武
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2012 年 32 巻 4 号 p. 785-791

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抄録

当科の小児急性虫垂炎に対する治療方針は,(1)虫垂腫脹のみ症例は保存治療,(2)糞石もしくは膿瘍・腫瘤形成症例は待機的腹腔鏡下虫垂切除術(Interval appendectomy:以下,IA),(3)汎発性腹膜炎症例は緊急腹腔鏡下虫垂切除術(以下,ELA)と考えている。過去約4年6ヵ月間に経験した虫垂炎86例を,(1)保存治療群30例,(2)短期再燃群8例,(3)ILA施行群23例,(4)Drop out(以下,D/O)群6例,(5)手術未施行群10例,(6)緊急手術群9例に分類し検討を行った。(1)は保存治療完遂率100%,(4)の保存治療完遂率は84.6%であった。また(1)は入院日数と診療点数において(3),(4)に対して有意に低い結果となり(p<0.05),虫垂腫脹のみ症例は,入院期間・医療コストいずれも手術症例より保存治療が優れていた。また(1)と(3)の糞石のみ症例での検討では,入院日数に有意差を認めず診療点数においてのみ有意差を認めた。小児急性虫垂炎における保存的治療およびILAは,有用性が高い治療法であるが,その適応は十分に検討する必要性があると考えられた。

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© 2012 日本腹部救急医学会
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