2015 年 35 巻 3 号 p. 325-330
症例は74歳,男性。肝細胞癌再発に対する肝S8亜区域切除術後7日目より発熱をきたした。抗菌剤の投与を行ったが,改善せず,造影CT検査で肝切離面膿瘍が疑われたため術14日目に経皮的ドレナージを行った。その翌日,突然下血をきたした。下部消化管内視鏡検査で回腸末端に小潰瘍が多発していた。活動的出血はみられなかったため保存的加療を行ったが,術24日目に再度大量の下血をきたし,造影CT検査で小腸内に造影剤の漏出像がみられたため緊急血管造影検査を施行した。すると,空腸第1枝末梢に血管外漏出像が認められたため動脈塞栓術を行ったところ,止血が得られた。術後は腸管壊死や再出血なく,術51日目に軽快退院となった。消化管出血の部位同定に造影CT検査や血管造影検査は有用であり,動脈塞栓術は出血性小腸潰瘍に対する有効な治療法の一つと思われた。