2011 年 37 巻 4 号 p. 173-183
発芽・発根させたコムギ種子(品種ハルユタカ)の根部位よりRNAを抽出し,プロテインジスルフィドイソメラーゼ遺伝子(wPDI1~3)を取得した。wPDI1とwPDI3は1548bp, wPDI2は1539bpであり,アミノ酸レベルでの相同性は,wPDI1とwPDI2間で98.6%,wPDI1とwPDI3は99.2%,wPDI2とwPDI3は99.0%であった。wPDI2を用いて発現用ベクター構築した後,大腸菌を形質転換させリコンビナントPDI(rPDI)を調製した。インスリンを基質としたrPDIの総活性は114 U,比活性は336 U/mgであった。また,rPDIの酸化活性は,還元変性オボアルブミンのリフォールディングにて測定した。rPDIとコムギ粉中のPDI(native PDI)の性状を比較したところ,両PDIともに温度30℃,pH 8.5で最大活性を示したことから,rPDIはwPDIと類似の挙動を示すことを確認した。さらに,rPDIはnative PDIよりも温度,pHともに高い安定性を示した。本研究は,小麦由来PDIの発現に成功した初めての報告である。