γ-アミノ酪酸(GABA)は多くの豆類に存在していることはすでに明らかになっている。本研究では大豆の生育や登熟期の部位のGABA含量についての検討を行った。
完熟大豆のGABA含量は他の豆類より低いが,発芽期や登熟期でGABAが増加する傾向があった。また,特に登熟期にGABA含量が増加する傾向があり,登熟前期に莢中に多く存在し,登熟後期にかけてのGABA含量は,莢中が減少し,豆中に増加する傾向があった。登熟大豆中のGABAは,登熟前期に莢中で生成し,登熟後期に豆中に移行すると考えられる。また,登熟大豆中のGABAの機能としては,虫の食害や病原菌から未熟種子を防御している可能性が考えられた。
登熟大豆と発芽大豆のスラリー中のGABA生成の最適温度が約20℃異なっていた。また,登熟大豆スラリーの最適pHは幅広く安定であったが,発芽大豆ではpH6.0にピークが存在した。このことより,大豆の発芽期と登熟期でGABAを生成する酵素(グルタミン酸デカルボキシゲナーゼ:GAD)の性質が異なっている可能性が示唆された。