日本食品保蔵科学会誌
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Bifidobacterium longum Strain No.14-2によるN-acetylsucrosamineの資化性
李 夢秋宮沢 幸敬ZHAO Gang鈴木 公一川井 泰増田 哲也小田 宗宏
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2017 年 43 巻 4 号 p. 179-186

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抄録

 ビフィズス菌による,新規に合成されたN-acetylsucrosamine(Fruβ2-1αGlcNAc, SucNAc)の資化性について検討した。ビフィズス菌を,SucNAcを含むGAM(40)培地(通常培地の40%濃度,グルコースを0.12%含む)に培養し,増殖が促進されるかどうかを調べた。その結果,GAM(40)培地と比較し,SucNAc(1.0%)を添加した培地における増殖性が明らかに高い菌株がみられた。次いで,B. longum strain No.14-2を用い,半合成培地にglucose(0.12%)とSucNAc(0.5%)を添加し,培養の経時変化を調べた。本菌株は,培養12時間で培地中のグルコースを消費し,一旦増殖が止まった(第1の増殖相)。しかし,共存するSucNAcは全く消費されなかった。その後,培養36時間より48時間にかけて第2の増殖相がみられた(ジオーキシ)が,これはSucNAcが消費されたことによるものであった。

 半合成培地にglucoseまたはsucroseを単一炭素源として,さらに,glucoseとSucNAcを同時に炭素源としてB. longum strain No.14-2を培養し,得られた培養菌体より各々のcell-free extractを調製した。それらの各種糖質に対する分解活性を調べたところ,glucoseあるいはsucroseを単一炭素源とした場合には,いずれの糖質(disaccharide, oligosaccharide)に対しても分解活性は認められなかったが,glucoseとSucNAcを共存させた場合には,SucNAcを含め多種の糖質を分解した。

 本菌株はSucNAcを単独では資化できないものの,グルコース共存下では資化できること,そして,菌体内には多様な糖質分解活性がみられるようになったことなど,糖質分解酵素の発現・誘導が使用する炭素源により異なることがわかった。したがって,ビフィズス菌の糖質代謝の多様さが示されたことになるが,どのような糖質(炭素源)が,どのような機序で多様性をもたらすのかは興味ある課題と考える。

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© 2017 一般社団法人日本食品保蔵科学会
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