抄録
5℃で2か月もしくは3か月間貯蔵した“清見”果実を個別にポリエチレン袋で密封あるいは有孔包装し20℃および8℃に保持してこはん症の発生と生理・化学的変化を調べた。対照は無包装とした。
20℃保持では8℃に比べこはん症の発生が顕著であった。ポリエチレン袋個装によって無包装に比べこはん症の発生が明らかに軽減された。密封区は有孔区に比べ効果が大きかった。フィルムの厚さ (20μm, 50μm) による違いには一定の傾向がみられなかった。
こはん症の発生率が高い20℃無包装区は包装区より果実空隙中のCO2ならびにエチレン濃度は高い傾向がみられ, 酸素濃度も保持30日の無包装区の障害発生果以外では無包装区が包装区より高かった。障害果では健全果より, 果実空隙中のCO2, エチレン濃度が高く, O2濃度が低い傾向がみられた。障害果のCO2排出量は健全果より高かった。
果皮中の遊離アミノ酸含量は, 障害発生に伴い増加する傾向があり, 増加の程度はこはん症発生程度の高い果実で大きかった。こはん症の発生した果実の果皮にはフェノール類物質の蓄積が観察された。
官能検査では, こはん症が発生した果実の外観の評点は明らかに低かったが, 果肉品質の評点は大きく変化しなかった。