日本食品保蔵科学会誌
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リンゴ果実のポリフェノール含有量と色調の経時的変化
山王丸 靖子片山 脩金子 勝芳増田 哲男
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1998 年 24 巻 2 号 p. 103-108

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抄録
水耕栽培による褐変度の低いリンゴの機構解明を目的とし, 水耕および土耕栽培による2品種 ('ふじ', '北斗') のリンゴ果実の総PP含有量および色調の経時的変化を測定した。結果は以下のとおりである。
1. 'ふじ', '北斗'ともに, 土耕果のリンゴ磨砕汁の吸光度は, 時間の経過に伴って急激な増加を示すが水耕果ではその程度は緩やかで, 磨砕後60分経過でも土耕果の半分程度であった。
2. 測色色差計による測色値も, 吸光度と同様の傾向を示し, 水耕果では土耕果と比較して, 測定値の変化は少なかった。
3. 総PP含有量は, 磨砕後の時間の経過とともに減少する傾向を示した。'ふじ', '北斗'ともに土耕果の減少率は顕著であったが, 水耕果では緩やかに減少した。この総PP含有量の減少は褐変度の増加と反比例するもので両者には負の相関が認められた。
4. PPO活性は, 'ふじ', '北斗'ともに水耕果が土耕果と比較して明らかに低値を示した。この事から水耕果の弱褐変は, PPO活性の低値に由来すると示唆された。
5. PPOのアイソザイムパターンには, 栽培条件による差異は認められなかった。この結果から, PPO活性の低値は酵素の質ではなく, 水耕栽培によりPPO活性が抑制される事に由来すると推察された。
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