日本食品保蔵科学会誌
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梅酒梅の呈味成分, アミノ酸, ペクチン質, テクスチャーに及ぼす低温蒸気加熱処理の影響
金子 憲太郎乙黒 親男辻 匡子菊池 節子車 桓秀
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1998 年 24 巻 2 号 p. 95-101

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抄録
梅酒から分離した梅 (梅酒梅) の有効利用を目的として, 梅酒梅を蒸気加熱処理 (60-80℃, 湿度90%, 30分) し, 諸成分の分析値とテクスチャーの測定結果から, その有用性を検討した。その結果1) 蒸気温度の上昇に伴いエチルアルコールが減少し, 硬度が低下した。2) 梅酒梅の主要構成糖は, 砂糖に由来するグルコースとフラクトースであった。これらの糖は加熱処理中, 安定に保持された。3) 有機酸とアミノ酸は供試した梅酒梅の種類により異なっていたが加熱処理後もその量と組成は変わらなかった。4) 蒸気温度が上昇すると水溶性ペクチンが増加し, 塩酸可溶性ペクチンが減少した。しかし, ペクチン総量は変化しなかった。5) '南高'種にはアミグダリンが3mg/kg, プルナシンが9mg/kg検出された。'鴬宿'種には10mg/kgのアミグダリンと9mg/kgのプルナシンが含まれていた。これらの青酸配糖体は加熱処理中, 分解しなかった。6) 加熱処理した梅は, 蒸気温度の上昇に伴い果肉ペーストの粘着性が増大した。以上の結果から, 梅酒梅は加熱処理中に, 果実の酸により, 塩酸可溶性ペクチンが分解し, 水溶性ペクチンに変化するように思われた。また, 共存する糖と酸により, ペクチン質がゲル化し, その結果果肉ペーストの粘着性が増大すると考えられた。これらのことから, 加熱処理した梅酒梅は果肉が柔らかくなり, 糖, 有機酸アミノ酸が安定に保持されることが分かった。従って, 蒸気加熱処理は梅酒梅の活用域を拡大する可能性があると考えた。
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