パネトーネはイタリア北部で伝統的につくられているサワードゥブレッドである。スターターは小麦粉と水を加えて継続的に植え継ぐことによって維持されており, このような伝統的サワードゥは他の地域での維持管理が難しいとされてきた。そこで日本において, 伝統的手法により維持されているスターターおよびパネトーネ発酵工程に関与している微生物の調査を行った。その結果, 全工程を通して酵母菌数106-107cfu/g, 乳酸菌数107-108cfu/gが維持されており, 優勢菌種として酵母Candidamilleriと乳酸菌Lactobacillus sanfranciscensisの生息が確認された。イタリアでの調査でもパネトーネサワードゥにおけるC. milleriとL. sanfranciscensisの優位性が確認されており, 日本においてもこの独自の微生物叢が発酵に関与していることが明らかとなった。またL乳酸を生成するL. sanfranciscensisの存在が明らかとなり, 異性体タイプの違いに乳酸脱水素酵素の関与が示唆された。