日本食品保蔵科学会誌
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異なる環境で生かした活ホタテの生死前後におけるATP量変化とORP変化
チワポラナピワット モンコン大河内 正一高井 陸雄鈴木 徹
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2006 年 32 巻 2 号 p. 73-80

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抄録

活ホタテ貝鮮度計測法として酸化還元電位 (ORP) の利用可能性を調べた。活ホタテを三つのグループに分け, それぞれ異なる環境で維持した。一つは15-18℃の海水中に空気を入れながら保持, また同じ海水温度で空気を与えずに, もう一つは海水から取り出し10℃の空気中で貯蔵した。この状態で24時間までのORPとpHの変化を測定し, その後ホタテの身を貝柱から取り, 0℃に貯蔵した。貯蔵中のORP変化, K値, ATP分解, そしてD-乳酸量を分析した。生かした活ホタテは還元的状態にあり, 0.16-0.19Vの範囲内またpHの6.2-7.0にあった。ホタテの死後のORP値はすべての環境において上がった。またORPはK値とともに上がり, K値が25%あたりでORPは最大値を示した。これらのK値との関係から, 鮮度のよい刺身用のORP値は0.166-0.215Vであることがわかった。海水に空気を入れながら飼育したホタテ貝は死後のATP量が最も高いが, 10℃の空気中で貯蔵した貝はATP分解が最も速かった。同様に, 空気を入れながら飼育したサンプルの貯蔵中のD-乳酸変化は小さかったことから飼育中のエアレーションはK値変化より, 肉内のATP分解とD-乳酸蓄積に影響を与えることが示唆された。

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