医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
症例報告
肘筋の反復神経刺激試験が診断の一助となった眼筋型重症筋無力症の一例
髙橋 広大長澤 和樹松村 啓汰嘉村 幸恵平井 英祐前田 哲也諏訪部 章
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2024 年 73 巻 3 号 p. 577-581

詳細
抄録

重症筋無力症(myasthenia gravis; MG)の神経生理検査において,肘筋を被検筋とした反復神経刺激試験(repetitive nerve stimulation test; RNS)が臨床診断の一助となった症例を経験した。症例は70歳代女性,主訴は両側眼瞼下垂であった。眼瞼挙上術後も改善はなく,日内変動や上方注視での症状増悪を認めたため,精査加療目的に紹介となり受診した。神経学的には日内変動を伴う右側優位の両側性眼瞼下垂を認め,アイスパックテストが陽性であった。四肢および体幹の骨格筋には易疲労性を認めなかった。血液検査では血清抗アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor; AchR)抗体が陽性であった。以上から臨床的に眼筋型MGが疑われた。また,神経生理検査として,鼻筋,僧帽筋,小指外転筋,及び肘筋で低頻度RNSを施行したところ,肘筋のみで漸減(waning)現象を認め,眼筋型MGの診断がより確実なものとなった。眼筋型MGにおけるRNSは,waning現象の検出感度が高くないことが指摘されている。眼筋型MGを疑う症例で,表情筋に有意な筋電図所見が得られない場合には,肘筋のRNSを施行することでwaning現象の検出感度が向上され,臨床診断の一助となる可能性が示唆された。全身型MGとの鑑別上も重要な知見となりうると考え報告した。

著者関連情報
© 2024 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top