2026 年 75 巻 2 号 p. 458-464
80代男性,活力低下と食欲不振を訴え,当院救急外来を受診した。目立った神経学的症状は認められなかったが,造影CTにて右前頭部に腫瘤影を認め,脳腫瘍転移の可能性が疑われ,脳神経外科受診となった。翌週,脳神経外科受診時に左半身麻痺の症状が現れ,造影CTおよびMRIにより脳膿瘍と診断された。翌日に右開頭膿瘍排膿術が施行された。脳膿瘍病巣部より得られた排膿液検体から,Streptococcus intermediusおよびHaemophilus parainfluenzaeが検出された。脳膿瘍の培養結果に基づく抗菌薬治療と右開頭膿瘍排膿術により一時的な改善が得られた。しかし,誤嚥性肺炎が進行し,第61病日に死亡退院となった。本症例は著明な口腔内汚染と歯槽膿漏を認め,歯原性脳膿瘍の可能性が示唆された。早期の口腔ケアと感染症のモニタリングの重要性を再認識した症例であった。