抄録
幼児期に療育センターを受診した自閉スペクトラム症(ASD)児の知的水準について, 幼児期後半から小学校期にかけて縦断的研究を行った.2 つの出生コホートから選定された対象 62 名を幼児期後半に知能検査で測定された IQ に基づき 3 つの知的水準の区分(正常知能,境界知能, 知的障害)に沿って分類し,小学校期に知能検査で再度測定された各群の知的水準と比較して,区分の変更の有無の割合および 15 ポイントを超えた IQ の変動の有無の割合を検討した.結果,各 群とも IQ の平均値に有意な変化は見られなかったが,境界知能群では小学校期に知的水準の区分が変更となった人数の割合が他群に比べて有意に高かった.また,境界知能群では 15 ポイントを 超えた IQ の変動を示す割合も高く,このことが知的水準の区分の変更割合の高さと関係している 可能性が考えられた.以上より,幼児期後半に境界知能と判定される事例のなかに,小学校期にな ると幼児期後半の判定や判断の内容が実態に合わなくなり,福祉サービスや教育形態の見直しが必要となる事例が一定数存在する実態が示された.対象数の少なさ,および IQ の測定方法として複数の知能検査を用いたことが本研究の限界である.