日本家政学会誌
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自治体における空き家管理施策の啓発活動の状況
―市区町村の空き家管理担当者へのアンケート調査から―
崔 銀淑中山 徹清水 陽子清水 裕子森田 尋子
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2023 年 74 巻 10 号 p. 582-593

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抄録

 空き家がもたらす問題は, 管理不全によるものであることで, 空き家管理に特化して, 管理義務を知らせる啓発活動と管理不全空き家の予防, 相続登記に係る啓発等の3つに分けて, ①自治体が行っている啓発活動の状況, ②人口規模別と管理項目別との関係, ③空き家率別と管理項目別の関係を分析する. それによって空き家問題の第一歩である管理施策の効率的な啓発活動の方向性に示唆を得ることを目的とする.

 全国市区町村の空き家対策計画などから空き家管理の施策の状況を把握し, 実際に管理のために行われている先進事例の啓発活動を項目別実施率と実施後の評価を調べるために市区町村の担当部署へアンケート調査を実施した.

 調査結果は, 556自治体から回答の中で, 所有者の管理義務を知らせる啓発活動の実施率が最も高く, 81.3%から最低の25.7%となった. 空き家管理のためにより具体的な施策である管理不全空き家の予防のための啓発活動と, 相続登記に係る啓発活動の実施率は, 項目別に異なるが, 1割から2割で非常に低かった. 実施後の評価は, 項目別では, 50%以上から100%まで全般的に高く評価されていた. また, 項目別に異なるが概ね, 人口規模が多く, 空き家率が高い自治体で実施率や評価がやや高い傾向が見られた.

 地域環境に悪影響を及ぼさないように空き家を管理しながら地域に合わせる活用ができる効率的な空き家対策として, 管理不全空き家の予防と, 相続登記に係る啓発活動が今よりもっと積極的に行われるべきだ.

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© 2023 一般社団法人 日本家政学会
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