抄録
加齢男性性腺機能低下症候群(late-onset hypogonadism;LOH症候群)の定義は、男性ホルモンの低下と男性ホルモン欠落を暗示する徴候や症状を有することが求められている。Hypogonadismと最も関連する症状は性欲の低下(low libido)であるといわれている。他の症状としては抑うつ、苛立ち、不安、生気消失などの精神・心理症状、発汗、ほてり、睡眠障害、集中力低下などの身体症状、性機能関連症状が含まれる。これらの症状は必ずしも低アンドロゲン状態に特異的ではなく、男性ホルモン欠落の疑いを想起させる。すなわちLOH症候群の診断にはこれらの症状の一つあるいはそれ以上と男性ホルモン低値を伴わなければならないとされている。したがってLOH症候群の診断の基本は症状と男性ホルモンを測定することである。
LOH診断評価にかかせない質問表は多くの施設でHeinemannらのAMSスコアが使用されている。精神・心理症状、身体症状、性機能症状各ドメインに分かれ、その重症度も評価できる。LOH症候群の必須検査は男性ホルモンの測定で総Tは年齢階層別の平均値の推移が、LOH症候群を頻発する初老期から老年期にかけてもYAM値の80%までしか減少しないのに対し、フリーテストステロン(フリーT)は加齢とともに直線的に減少し、若年成人平均値(Young Adult Mean;YAM値)の50%までに低下したことから、学会ではフリーTをLOH診断基準検査とした。そのフリーT値は20歳代のmean-2SDである8.5pg/mL未満をLOHと診断する。今後フリーTがこのLOH症候群の生化学的マーカーとして相応しいのか、LOH症候群の諸症状と併せて検証して行かねばならない。