総合健診
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総合健診とがん
前立腺がんに対するPSA検診の問題点と普及への対策
中島 耕一
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キーワード: PSA, PSA検診, PSA監視療法
ジャーナル オープンアクセス

2014 年 41 巻 2 号 p. 308-314

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抄録
 本邦における前立腺がんは現在のところ罹患者数・死亡者数ともに増加している。したがってその対策は非常に重要である。PSAの導入により早期前立腺がんが発見されるようになり、根治の可能性が高まった。またPSA検診によって前立腺がん死亡率が20%減少することを報告した欧州の研究がありPSA検診の重要性は増していると考えられる。ただ医療経済の立場からは、必ずしもPSA検診を推奨するという立場に反対の意見もあり議論が存在していることも事実である。また前立腺がんはそもそもラテントがんが少なからず発生し、その発生率は加齢とともに上昇することが知られている。また自覚症状はなくPSAの上昇のみで発見された前立腺がんの中にも一定の割合で、高分化でがん容積の小さな前立腺がんが含まれ、早期がんの発見は一方で過剰診療の懸念をはらんでいる点も無視できない。しかし本邦においては、そもそもPSAの暴露率が低く米国から発せられるPSA検診を推奨しない立場での勧告をそのまま受け入れる土壌にはない。PSA検診および生検、前立腺がん治療における利益・不利益を明確にし患者への情報提供を間断なく続ける努力と、不必要な生検・過剰な治療を回避するシステム構築が泌尿器科医には課せられている。本稿においてはこうしたPSA検診にまつわる問題点を解説し、現在検討されているPSA監視療法をはじめとした過剰診療回避のための研究の一端を紹介した。
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© 2014 一般社団法人 日本総合健診医学会
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