【目的】近年、糖尿病、高血圧、脂質異常などが加齢性難聴の発症および進行に影響を与えることが広く知られるようになった。中でも糖尿病で聴力低下をきたすことは周知のものとなっているが、軽度の段階である耐糖能異常での影響については十分知られていない。そこで当施設健診受診者を対象として、聴力低下別に軽度高血圧、耐糖能異常、軽度脂質異常の有所見頻度を比較した。
【対象】平成23年度(平成23.4.1~平成24.3.31)当施設において健診を受診し、聴力検査(オージオメトリ 1,000Hz、4,000Hz)を実施した40歳~79歳までの受診者57,836名を対象とした。
【方法】年代別に軽度高血圧、耐糖能異常、軽度脂質異常の有所見者頻度を聴力損失別に比較した。対象とする関連因子は、耐糖能異常(HbA1c(NGSP)5.9~6.4%もしくは空腹時血糖 110~125mg/dL)、高血圧(収縮期血圧 140~159mmHgもしくは拡張期血圧 90~99mmHg)脂質異常(中性脂肪 200~399mg/dLもしくはLDL-Cho 140~159mg/dL)とし、既往のある者は対象外とした。聴力所見あり(有所見者)、聴力所見なし(無所見者)の2群間で、軽度高血圧、耐糖能異常、軽度脂質異常の頻度の比較をχ
2 検定で行った。
【結果】聴力非低下群に比較して40~60歳代までの 4,000Hz、4,000/1,000Hzにおける聴力低下者において耐糖能異常および軽度高血圧が有意に多かった(p<0.01)。一方、軽度脂質異常においては、60歳代の 4,000Hzと70歳代でp<0.05と一部有意な結果となったが耐糖能異常や軽度高血圧ほどの有意な関係を認めなかった。
【結論】中高年期において軽度高血圧、耐糖能異常、軽度脂質異常は聴力低下に影響するものと推測された。
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