総合健診
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41 巻, 2 号
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原著
  • 熊田 桂子, 田中 和子, 宮下 幸子, 堀内 久美子, 相川 聡美, 山田 英子, 爲本 香苗, 渡邉 秀子, 辻野 京子, 古林 孝保, ...
    2014 年 41 巻 2 号 p. 259-267
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     膵癌は早期診断が困難とされるが、近年、専門施設からは、超音波内視鏡検査(以下EUS)や内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)を応用した病理組織診断、分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(分枝型IPMN)などの高危険群の厳密な経過観察が早期診断に有用との報告がみられる。そこで、平成23年度の当センターにおけるドック・健診受診者14,151人(男性9,355人、女性4,796人、平均年齢52歳)の腹部超音波検査による膵癌検診の結果を分析し、健診機関における早期膵癌発見の対策を検討した。
     超音波検査の有所見者は2.0%、膵癌の間接所見である膵嚢胞と膵管拡張の発見率は1.0%と0.6%であった。膵嚢胞の発見率は他施設報告の0.7%と比べ高率であった。精検受診率は78%、膵癌発見率は0.007%でいずれも他の検診施設と比べ遜色なかった。よりハイリスクとされる分枝型IPMNの発見率は0.12%で、膵嚢胞と膵管拡張の合併例で高率にみられ、該当例には確実な精検の実施と経過観察が必要と思われた。膵腫瘍性疾患の発見率0.15%で、精検方法別陽性率は、EUSまで実施された8例で100%、CT・MRによる67例では19%であった。EUSは膵癌診療ガイドラインで、CT・MRで確定診断が得られない場合推奨されるが、駆使できる医療施設が限られ実施は約10%に留まり、多くの精検はCT・MRIで終了していた。
     膵癌検診の向上のため、健診機関としては(1)膵臓の描出率を高め、膵嚢胞・膵管拡張、分枝型IPMN などの高危険群を高率に拾い上げ、(2)発見された高危険群については、膵癌診断に有効で的確な精検や経過観察が不可欠であることを受診者へ啓蒙すること、精検紹介時には専門施設と密接な連携をとること、(3)精検で膵内外に所見無しとされた場合も、次年度以降、健診再受診時に超音波検査で同所見を認めたら、再度専門施設での精検を勧めることが重要と考えられた。
  • 齊藤 優子, 五十嵐 佳美, 宮前 亜希, 田中 幸子, 藤田 貢, 吉田 勝美, 千 哲三
    2014 年 41 巻 2 号 p. 268-273
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】近年、糖尿病、高血圧、脂質異常などが加齢性難聴の発症および進行に影響を与えることが広く知られるようになった。中でも糖尿病で聴力低下をきたすことは周知のものとなっているが、軽度の段階である耐糖能異常での影響については十分知られていない。そこで当施設健診受診者を対象として、聴力低下別に軽度高血圧、耐糖能異常、軽度脂質異常の有所見頻度を比較した。
    【対象】平成23年度(平成23.4.1~平成24.3.31)当施設において健診を受診し、聴力検査(オージオメトリ 1,000Hz、4,000Hz)を実施した40歳~79歳までの受診者57,836名を対象とした。
    【方法】年代別に軽度高血圧、耐糖能異常、軽度脂質異常の有所見者頻度を聴力損失別に比較した。対象とする関連因子は、耐糖能異常(HbA1c(NGSP)5.9~6.4%もしくは空腹時血糖 110~125mg/dL)、高血圧(収縮期血圧 140~159mmHgもしくは拡張期血圧 90~99mmHg)脂質異常(中性脂肪 200~399mg/dLもしくはLDL-Cho 140~159mg/dL)とし、既往のある者は対象外とした。聴力所見あり(有所見者)、聴力所見なし(無所見者)の2群間で、軽度高血圧、耐糖能異常、軽度脂質異常の頻度の比較をχ2 検定で行った。
    【結果】聴力非低下群に比較して40~60歳代までの 4,000Hz、4,000/1,000Hzにおける聴力低下者において耐糖能異常および軽度高血圧が有意に多かった(p<0.01)。一方、軽度脂質異常においては、60歳代の 4,000Hzと70歳代でp<0.05と一部有意な結果となったが耐糖能異常や軽度高血圧ほどの有意な関係を認めなかった。
    【結論】中高年期において軽度高血圧、耐糖能異常、軽度脂質異常は聴力低下に影響するものと推測された。
  • 小島 菜実絵, 水野 秀一, 宮原 恵子, 小田 和人, 松尾 嘉代子, 飯出 一秀, 吉村 良孝, 田井 健太郎, 今村 裕行
    2014 年 41 巻 2 号 p. 274-282
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     大学女子バレーボール、テニス、空手道部員42名を対象に貧血の栄養サポートにおける基礎的情報を得ることを目的とし、栄養素等・食品群別摂取状況、血液生化学検査値について検討した。対象者は血清フェリチン値を基に3群(Low、Middle、High群)に分類した。栄養素等摂取量では銅を除いた項目の適正量を3群とも満たしておらず、さらにLow群はクリプトキサンチンおよびビタミンCが有意な低値を示した。血液生化学検査では、3群とも鉄飽和度を除いた全ての項目は基準値内であったが、Low群はヘモグロビンおよび 血清鉄が有意な低値を示し、総鉄結合能および不飽和鉄結合能が有意な高値を示した。以上より、貧血は存在しなかったがLow群のみが前潜在性鉄欠乏を示した。これは、クリプトキサンチンおよびビタミンC不足による非ヘム鉄の吸収効率の低下、および非ヘム鉄の供給不足が一因として考えられた。
  • 片山 友子, 水野(松本) 由子, 稲田 紘
    2014 年 41 巻 2 号 p. 283-293
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     厚生労働省は、国の医療対策において特に重点を置いているがん、脳卒中、心臓病、糖尿病の四大疾病に、近年患者数が増えている精神疾患を加え、2011年に、五大疾病とする方針を決めた。健康は身体的、精神的な要因から考慮される必要がある。本研究では、大学生を対象に、食事、睡眠、運動などの基本的生活習慣とストレスなど個人のメンタルヘルスに関する意識調査を実施し、生活習慣とメンタルヘルスの関連性について検討を行った。
     健康度・生活習慣のパターンの判定から、充実型、生活習慣要注意型、健康度要注意型をI群、要注意型をII群とする2群に分類した。この2群について、心理検査と質問紙を用いて、気分状態および心身の健康と生活習慣の調査を行った。
     その結果、I群は、うつ傾向が低値を示し、II群と比較すると、ストレスがあると答えた者は少なく、平均睡眠時間は長く、食生活、栄養バランスなどの生活習慣の良いことがわかった。また生活習慣が望ましい状態にあると、気分状態が安定し、活動性が高いと考えられた。II群は、心理検査では憂うつだと感じている者が多く、さらに不安と不眠が高値を示した。また、I群と比較すると、食生活に問題があり、栄養バランスを考えて食事を摂っていないこと、平均睡眠時間が短いこと、ストレスがあり、さらにストレス対策方法がある者の割合が低いということがわかった。II群は、抑うつが強く、気分状態が悪く、活動性が低いと考えられた。
     大学生などの比較的若い世代は、健康問題が出現することは少ない。しかし、生活習慣は長い年月をかけて、徐々に形成されていくものであることから、長年にわたる生活習慣を変えることは困難である。したがって、若い年代から健康を意識した生活をし、健康な生活習慣を身につけることは、将来の生活習慣病への予防にも繋がり、青年期から壮年期、さらに老年期における健康生活を送るために、きわめて重要なことである。
  • 島本 武嗣, 山道 信毅, 岡田 実, 和田 亮一, 光島 徹
    2014 年 41 巻 2 号 p. 294-299
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】本研究では、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)の持続感染と空腹時血糖およびHbA1c(JDS)値との関係において、欧米における先行研究の結果が、H. pyloriの遺伝子型や毒性、2型糖尿病の疾病特性の異なる我が国でも支持できるのか検討した。
    【方法】2010年1月から12月に亀田総合病院附属幕張クリニックにおいて、ピロリ菌抗体価測定とペプシノゲン判定による胃癌ハイリスク検診を受診した18,429名から、H. pylori、空腹時血糖およびHbA1cに影響があると考えられる因子を除外した16,046例を対象とした。多重ロジスティック回帰分析により算出した傾向スコア(Propensity Score:PS)を使用し、マッチング法とIPW(Inverse Probability Weighting)による因果効果の推定を行った。
    【結果】空腹時血糖は有意な負の相関(リスク差:-0.8163、リスク比:-0.0087、 p < 0.0001)、HbA1cは有意ではない負の相関(リスク差:-0.0089、リスク比:-0.0017, p = 0.0682)と推定された。
    【結論】H. pyloriの持続感染は、糖尿病のリスクを低下させる可能性が示唆されたが、ごく僅かな影響と考えられた。
特集
総合健診とがん
  • 江口 研二
    2014 年 41 巻 2 号 p. 300-302
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     適切な肺がん検診を普及させるには、対策型検診と任意型検診との違いを医療者側も受診者側も認識することが必要である。現行の胸部写真による肺がん検診は、肺癌による死亡率低減に相応のエビデンスがあり、肺癌診療ガイドラインで精度管理水準を遵守した胸部写真による検診が推奨されている。低線量CTによる肺がん検診は、米国の大規模比較試験(NLST研究)でその有効性が検証されたが、対策型検診への導入は時期尚早である。今後の低線量CT肺がん検診は、高リスク群の選別、適切な検診間隔、鑑別診断、確定診断、精度管理などの課題解決が必要である。本邦で低線量CT検診の認定医師・認定技師の資格制度が運用されている。現行の胸部写真検診の精度管理体制のみならず、任意型検診として実施されている低線量CT肺がん検診の精度管理体制の整備などが喫緊の課題である。
  • 河合 隆, 後藤田 卓志, 森安 史典
    2014 年 41 巻 2 号 p. 303-307
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     血清ペプシノゲン(PG)値がH. pylori感染による萎縮性胃炎の進行とともに低下することを応用したPG法は胃癌のスクリーニングとして用いられている。胃がんの高リスク群を絞りこむ方法として非常に有用な方法であり、著明に低下している胃がん検診の受診率を明らかに向上させている。H. pylori除菌後にPG法の判定が大幅に変化するなどの問題が残されているが、PG値はH. pylori感染および活動性胃炎の指標としても有用である。今後測定キットの改善などによりさらに精度の高いPG測定が行われ、検診および外来診療の場で使用されるであろう。
  • 中島 耕一
    2014 年 41 巻 2 号 p. 308-314
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     本邦における前立腺がんは現在のところ罹患者数・死亡者数ともに増加している。したがってその対策は非常に重要である。PSAの導入により早期前立腺がんが発見されるようになり、根治の可能性が高まった。またPSA検診によって前立腺がん死亡率が20%減少することを報告した欧州の研究がありPSA検診の重要性は増していると考えられる。ただ医療経済の立場からは、必ずしもPSA検診を推奨するという立場に反対の意見もあり議論が存在していることも事実である。また前立腺がんはそもそもラテントがんが少なからず発生し、その発生率は加齢とともに上昇することが知られている。また自覚症状はなくPSAの上昇のみで発見された前立腺がんの中にも一定の割合で、高分化でがん容積の小さな前立腺がんが含まれ、早期がんの発見は一方で過剰診療の懸念をはらんでいる点も無視できない。しかし本邦においては、そもそもPSAの暴露率が低く米国から発せられるPSA検診を推奨しない立場での勧告をそのまま受け入れる土壌にはない。PSA検診および生検、前立腺がん治療における利益・不利益を明確にし患者への情報提供を間断なく続ける努力と、不必要な生検・過剰な治療を回避するシステム構築が泌尿器科医には課せられている。本稿においてはこうしたPSA検診にまつわる問題点を解説し、現在検討されているPSA監視療法をはじめとした過剰診療回避のための研究の一端を紹介した。
  • 鈴木 昭彦, 石田 孝宣, 大内 憲明
    2014 年 41 巻 2 号 p. 315-321
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     がん検診の目的は、受診者の当該がんの死亡率の低減にある。この目的を達成するために、科学的に有効性の証明された検診方法で、正しく検診が行われることが重要で、さらに多くの対象者が受診することで検診対象集団の中での効果が明らかとなる。乳がん対策の分野で、現時点で科学的な死亡率低減の根拠が示された検診方法はマンモグラフィをベースとした検診のみであるが、近年、任意型検診や一部の対策型検診において超音波検査を導入する動きがある。超音波検診は標準的な検査方法や診断基準が確立されておらず、乳がん死亡率の低減効果も証明されていない。検診には検査の偽陽性や追加の画像検査、身体的侵襲をともなう生検、精神的および経済的負担の増加、過剰診断などの多くの不利益もともなうため、検診の利益が不利益を確実に上回ることが証明されていない検診は、安易に取り入れられるべきではない。我が国では世界に先駆けて2006年から「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験(J-START)」が進行中であり、その解析結果によって超音波検査を乳がん検診の中で有効に運用していくシステムが構築されてゆくであろう。検診が真に有用であることとは、発見率のみならず、精度管理や、多くの不利益に対する検証も行われなければならず、エビデンスの確立していない現時点での拙速な超音波検査の導入は、慎重に判断しなければならない。
  • 小澤 信義, 岩成 治
    2014 年 41 巻 2 号 p. 322-331
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     日本では、毎年約15,000人が子宮頸癌(上皮内癌含む)と診断され、約3,500が死亡している。そのうち、44歳までに約400人が死亡している。20代30代の女性に限ればもっとも罹患率が多い癌は子宮頸癌であり、増加傾向が続いている。
     日本の現状の問題点は(1)検診受診率が低い(2)従来法細胞診での診断が続いている(3)HPV予防ワクチンの接種の遅れである。日本産婦人科医会は子宮頸がんの撲滅をめざして、(1)ベセスダシステム(TBS)の導入(2)液状化検体細胞診(LBC)の導入(3)HPV併用検診の導入(4)HPV予防ワクチンの積極的な勧奨の再開(WHOやFIGOは再度安全宣言を出している)(5)受診率の向上を目指している。今回はTBS、LBC、HPV併用検診とワクチンに関するトピックスについて解説する。
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