総合健診
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日本総合健診医学会 第45回大会
日本総合健診医学会 第45回大会・パネルディスカッション 健診・人間ドックにおける多職種連携 多種職連携を志向した健診医学における薬剤師の役割
下枝 貞彦
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2018 年 45 巻 3 号 p. 492-498

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抄録

 2013年6月に公表された日本再興戦略の中で、疾病予防・健康管理の推進に関する新たな仕組みづくりとして、今後求められる保険薬局のあり方が述べられている。同戦略中には、国民健康寿命の延伸のために保険薬局を地域に密着した健康情報の拠点とし、健康に関する助言、相談、情報提供を行うことで、保険薬局・薬剤師の活用を促進するよう求められていた。提言を受け国は、高齢者の多くが地域の身近な医療機関を受診したり、在宅医療・介護を受けたりできる社会である「地域包括ケアシステム」の構築を掲げ、住まい・医療・介護・予防・生活支援の一体的な提供体制を目指し、「健康サポート薬局」制度が新設され運用開始となった。さらに、かかりつけ薬剤師、薬局の重要性も再評価され、平成28年度の診療報酬改定に結びついたと考えられる。
 今後、地域包括ケアシステムの中で、健康サポート薬局やかかりつけ薬局は、当該地域における多種職連携の拠点となり、健診医学を通じ疾病の一次予防や二次予防に貢献することが期待される。特に薬剤師がその職能を発揮できる分野として想定されるのが、①栄養指導や運動療法を通じた生活習慣の改善、②行動変容を伴う服薬アドヒアランスの向上、③服薬に伴う副作用のモニタリング、④重複投与の回避や残薬の削減等である。
 一方、薬剤師に対しては、患者の服薬情報の一元的把握とそれに基づく薬学的管理・指導などの機能が必ずしも発揮されず、患者本位の医薬分業になっていないとの厳しい指摘がある。これらの指摘は、薬剤師側の知識不足や技術力不足にも原因があり、薬学教育6年制下の新カリキュラムでは、多種職連携を志向した健診医学への貢献を意識した臨床教育を積極的に行うことが課題となる。

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© 2018 一般社団法人 日本総合健診医学会
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