2018 年 45 巻 6 号 p. 736-741
当地区においては2019年から対策型の胃がん検診に内視鏡検査が取り入れられる予定となった。今後内視鏡検査が増えることが想定され、これまで行ってきた内視鏡検診の実績をまとめ、今後の対応について検討した。
2012年10月から2017年12月までの5年3か月の間に当院で行った内視鏡による胃がん検診受診者の総数は3,482名であり、そのうち、男性は2,348名、女性は1,134名であった。年代別内訳では40歳代が最も多く(n=1,207)て、次いで50歳代(n=1,085)、60歳代(n=591)、70歳以上(n=141)、20歳代(n=31)の順であった。
胃がん検診の受診者数はx線検査、内視鏡検診受診者は両群ともに年々増加しているが中でも内視鏡検診受診者の比率が緩やかに増加している。胃がん検診全体の中に占める内視鏡検診の割合は16.3%であった。
経口内視鏡と経鼻内視鏡の内訳は初年度には経鼻内視鏡を望まれる方の割合が特に多かったが、その後はほぼ一定であり全体では61.3%であった。
必要に応じて迅速ウレアーゼ試験によるピロリ菌の検査を行っているが実施件数は2015年が最多であり、実施比率は全期間の平均は20.0%であり、その割合は年毎に漸減している。ピロリ菌陽性率は迅速ウレアーゼ試験受診者の32.5%であり、内視鏡検査受診者全体の6.5%である。陽性率は年毎に減少しつつある。
病理生検実施率は全体としては16.2%であり、各年次の実施率は11.7~22.7%である。
当院における一般外来患者と検診受診者の合計の内、26.6%が検診受診者である。内視鏡検査受診者の年次推移は13.8~30.0%でありが年毎に内視鏡検診受診者の割合が緩やかに増加していて、2017年が最も多く30.0%であった。
内視鏡検診で発見された胃がんは6例であり、全例がstageⅠAである。2例は外科切除を行い、4例は当院で行ったESDにて治療が完結した。年齢は50歳~60歳代であり、男性が5例、女性が1例であった。ピロリ菌は2例が陽性であり、3例は陰性、1例は除菌後であった。
内視鏡検診に伴う偶発症は前処置に伴う薬剤ショック0件で生検後の出血は1件で薬剤散布により止血出来た。経鼻内視鏡受診者に発生した鼻出血に関しては耳鼻科にて止血処置を行った件数は、2件であり重篤な症例はなかった。