2020 年 47 巻 5 号 p. 546-552
近年、「心不全パンデミック」と呼ばれるような心不全患者の増加がある。入院を要した心不全患者の原因疾患としては、1)虚血性心疾患、2)高血圧、3)弁膜症であり、最近では、虚血性心疾患の率が上昇している。しかし、左心機能が保たれた心不全のHFpEFは、左心機能が低下した心不全のHFrEFに比べて高血圧の占める割合が高く、高血圧が国民病とされる本邦では、患者の超高齢化に伴ってHFpEF患者が増加している。
増え続ける心不全患者に対応するためには、心不全を一局面の病態ではなく、進行する連続的な病態としてとらえる必要がある。2018年に日本循環器学会が発行した「急性・慢性心不全診療ガイドライン」では、心不全患者を、ステージA:器質的心疾患のないステージ、ステージB:器質的心疾患のあるステージ、ステージC:心不全ステージ、ステージD:治療抵抗性心不全ステージ、と定義している。ステージA/Bでは無症候であっても高リスク群であれば早期に治療介入して心不全の発症を予防し、ステージC/Dでは症状の改善に加えて、心不全の進行・再発予防、生命予後の改善を図る。
心不全の一次・二次予防での運動療法の役割は大きく、心不全患者の病態・病期などに応じて継続的に実践する必要がある。2017年には心リハ学会による心不全の心リハの標準プログラムが公開されている。これは心リハのプログラムであると同時に実践のマニュアルであり、努力目標に向かって継続的な業務改善を行うことで、心不全患者への心リハの質を担保するものである。
心不全患者数が増加し続けることが予測される中、多様な問題を抱える心不全患者への効果的な対応には、エビデンスに基づく効果的な予防・治療と質の高いチーム医療の確立が急務である。中でも、ステージA/Bの患者を早期に発見し、生活習慣の管理や危険因子への適切な介入に努めることは極めて重要であり、本学会の意義と役割は大きいものと考える。