2022 年 49 巻 2 号 p. 299-307
【目的】当院人間ドックでは年間約2,400件の肺ヘルカルCTを施行している。肺疾患精査が目的だが、CT機器の精度向上に伴い、冠動脈石灰化を多く確認するようになった。冠動脈石灰化を偶発病変として要精密検査と判定し、石灰化を認める症例において冠動脈有意狭窄の有無や、リスク因子について検討した。
【対象】2019年1月から同年12月の間に、当院ドックで肺ヘルカルCTを施行した2,426名。
【方法】1)以下を評価項目とし、冠動脈石灰化の有無で評価した。
性別、年齢、喫煙の有無、Brinkman指数、BMI、内臓脂肪面積。高血圧、糖尿病、高脂血症の有無。血圧測定値、HbA1c、LDL-C、中性脂肪、HDL-C、eGFRの検査値。
2)健診後に医療機関受診を確認できた症例で、冠動脈造影CTまたは冠動脈造影検査(CAG)のいずれかを行なった「非PCI群」と、経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行した「PCI群」で、同評価項目に有意差があるかを検討した。
【結果】1)肺ヘルカルCTは2,426名に行い、冠動脈石灰化を296名(12%)に認めた。2)冠動脈石灰化を有する群は、有しない群に比べ、eGFRを除く評価項目で有意差を認めた。3)冠動脈石灰化を有した296名中80名の医療機関受診と検査結果を確認できた。受診後検査で80名中34名は冠動脈造影CTのみ、46名はCAGを施行し、16名(0.7%)にPCIが施行された。4)「PCI群」は「非PCI群」と比較し、糖尿病の有病者が有意に多かった。
【結語】冠動脈石灰化を認める群は、eGFRを除き冠危険因子の保有率が有意に高かった。冠動脈石灰化を認める糖尿病有病者は、PCI適応となる冠動脈狭窄を認める率が有意に高かった。
冠動脈石灰化は、小石灰化でも有意狭窄を認める症例があり、健診時の評価項目のみでは判別困難のため、未精査の場合は専門医療機関での評価が必要と思われた。