医療マネジメント学会雑誌
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軽症脳梗塞に対するクリティカルパスの経済効果
柴田 靖松下 明小林 栄喜
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2005 年 5 巻 4 号 p. 497-500

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抄録
クリティカルパスの目的は在院日数短縮,医療費削減, 医療標準化による臨床効果などである.脳梗塞は症例毎の重症度, 経過の個人差が大きく, 脳梗塞に対するクリティカルパスの有効性は確立していない.我々は急性期軽症脳梗塞に対するクリティカルパスを作成, 導入し, 本院入院加療した軽症脳梗塞症例に対するクリティカルパスの経済効果を検討した.導入前症例を historical control とした, case-controlled study である.対象は本院に入退院した急性期軽症脳梗塞症例で, クリティカルパス導入前に入院した37例をコントロール群とした.クリティカルパス導入後に入院した軽症脳梗塞35例にクリティカルパスを使用し, うち脱落1例 (2.9%) あり, クリティカルパス完全使用例は34例 (クリティカルパス完遂率97.1%) であり, これをクリティカルパス群とした.クリティカルパスは注射箋, 指示箋一体型で, オザグレルナトリウムとエダラボンの2週間投与を基本としたが, 患者の状態により注射内容や退院時期は主治医の判断に委ねた.クリティカルパス群とコントロール群の背景, 症状, 責任病変, 神経所見, ADL, 合併症, 併発症に差はない.在院日数はコントロールで19.9日, クリティカルパス群で15.1日とクリティカルパス群で有意に短縮した.在院日数の分散もクリティカルパス群で有意に減少した.保険請求点数ではクリティカルパス群でリハビリ, 入院費が減少し, 注射が増加し, 総点数では差が無かった.クリティカルパスの導入は有用な経済効果を示し, クリティカルパスの改善により更なる効果が期待できる.
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