抄録
無線機器の小型化・高感度化に伴い,装置内電磁干渉の分析には近傍磁界測定の高感度化および高空間分解能化が望まれている。ループ型の近傍磁界プローブはサイズと測定感度にトレードオフの関係があるが,本研究ではこの両者の定量的関係を明らかにし,また高空間分解能化の手法を提案した。まず,感度劣化の主要因である近傍電界を表現する等価回路を作成し定量的な設計を可能とした。試作した近傍磁界プローブの近傍電磁界に対する特性を評価した結果,電界を抑制するためにシールドを持つプローブは非シールド型のプローブに比べ近傍電界による誘起電圧が2 GHzから9 GHzの周波数範囲で6 dB以上小さくできた。プローブの形状・配置情報から求めた等価回路を用いてこの近傍電界に対する感度の差を表現可能とした。次に,プローブ高さを初期位置とずらした位置での測定誘起電圧の差分から空間分解能を向上する手法を提案し,試作したループ内辺1 mmのプローブを用いてずらし量を30 μmとしたとき,ループ内辺30 μmのプローブと等価な空間分解能を持ち,空間分解能の指標である測定誘起電圧の半値幅は本手法を適用しない場合に比べ約40%改善した。