抄録
はんだからのウィスカの発生は,高温湿度環境に放置することによって生じるので,電気化学的測定を採用し,あわせてEPMA分析を行って,その発生のメカニズムを考察した。この結果を踏まえて,ウィスカの発生を抑制する効果をもつ材料の提案を行った。
まず,はんだがSn–3Ag–0.5Cuで,種々のフラックスを変えてウィスカの発生を見た結果,活性剤に臭素があると,腐食を促進する触媒となっており,他のフラックスではウィスカ発生までの時間が長くなった。また,Snはその水酸化物を経て酸化錫になることがAir-HAST(通常HASTで試験されている装置に空気分圧を追加したもの)の実験結果より導き出された。
次に,臭素系活性剤を含むフラックスを使って,種々のはんだ合金のウィスカ抑制効果について検討した。その結果,おおよそ1 wt%程度以上のZnやInならびにBiの添加でウィスカ発生の抑制効果があることを見いだした。これらの金属には,Snの溶出を防止するか,拡散を防止する効果のあることがわかった。
さらに,温度と湿度を種々変えた実験から加速性試験法の検討を行った。その結果,温度特性から活性化エネルギとして0.84 eVが得られた。また,湿度は温度とは独立事象であることも確認できた。これらの結果より,使用時のウィスカ発生までの時間の予測式の考察をした。