日本外科系連合学会誌
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血管新生阻害物質による消化器癌転移抑制
今野 弘之
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1996 年 21 巻 6 号 p. 922-928

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抄録

癌の進展における血管新生の意義が注目され, 腫瘍血管を標的とした血管新生阻害剤の抗腫瘍効果が注目されている。われわれはヒト胃, 大腸癌に対する血管新生阻害剤の抗腫瘍効果を実験的に検討した。ヌードマウスにヒト癌株を同所移植することにより, 肝転移モデルを作製した。血管新生阻害剤としてはFumagillinの誘導体であるTNP-470を用いた。TNP-470は胃癌, 大腸癌いずれの肝転移も対照群に比し有意に抑制した。また腫瘍倍加時間の短い腫瘍に対しては腫瘍増殖抑制効果を示した。さらに移植腫瘍切除モデルを用いた検討では, 切除後転移の増悪を認めたがTNP-470は有意に増悪を抑制した。TNP-470をはじめとする血管新生抑制剤は消化器癌に対する新しい治療戦略となりうる。

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