日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
左房粘液腫と大動脈弁乳頭状弾性線維腫を同時に認めた1例
稲村 順二秋田 雅史塩見 大輔杉森 治彦青木 雅一中尾 達也
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2016 年 45 巻 4 号 p. 196-199

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抄録

心臓原発腫瘍は稀な疾患であり,組織学的には粘液腫が最も多く,ついで乳頭状弾性線維腫(Papillary fibroelastoma : PFE)が多いと言われている.今回われわれは,左房粘液腫と大動脈弁PFEを同時に認めた1例を経験したので報告する.症例は77歳女性.夜間胸痛で前医を受診され,冠動脈CTにて左房粘液腫を指摘され,当科紹介となった.心臓超音波検査にて左房内に20 mm大の可動性の乏しい腫瘤を認め,待機手術の方針となった.術中の経食道超音波検査(Transesophageal echocardiography : TEE)にて大動脈弁左冠尖と右冠尖の交連間にひらひらと動く構造物を認めた.人工心肺確立後,心停止下に大動脈を切開して大動脈弁を観察したところ,左冠尖に毛羽立ちのあるPFEを認め,切除した.右側左房切開して左房内腫瘍を観察したところ,腫瘍が心房中隔に付着しており,心房中隔および左房壁ごと一塊に摘出した.心房中隔および左房の欠損部は自己心膜で修復した.術後,洞性徐脈と接合部調律および心房細動の頻脈を繰り返した.その後,洞停止を伴うようになり,第29病日にペースメーカー植え込み術を施行し,第38病日に軽快退院となった.組織学的に異なる心臓腫瘍を同時に認めることはきわめて稀である.術前および術中のTEEでの評価がきわめて重要と思われた.

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