本研究の目的は,図形課題遂行時における脳内の血液動態の計測より,合同図形弁別過程と脳内のヘモグロビンの濃度変化の関係を検討し,その特徴を明らかにすることである.平面上の合同な図形の弁別課題において,教具としてのシート使用の有無と試行回数を変数とし,大学生を被験者として実験を実施した.その結果,シート使用の有無によって,酸素化ヘモグロビン(oxyHb),脱酸素化ヘモグロビン(deoxyHb),両者の総和である総ヘモグロビン(totalHb)の変化の様相に違いが見られること,とりわけシート不使用時にoxyHbとtotalHbの増加が顕著であることが明らかになった.また,課題解決方法獲得時以降においてoxvHbとtotalHbの減少が認められた.これらのことから,脳内の血液動態の測定値が合同図形弁別過程と関連して変化しており,学習過程を分析する一つの指標としての可能性が示唆された.