2007 年 31 巻 2 号 p. 125-134
近年の教育評価の研究では,学習の場面と独立した評価ではなく,学習の場面に埋め込まれた評価が試みられている.その方法の1つとして,学習者同士が評価を行うことが有用であることが知られている.相互に学習コミュニティメンバー全員の評価をすることは,メンバーの人数が多くなるにつれて困難になるため,評価すべき相手を選択する必要が生じる.その選択方法を考えるために,評価する学習者が,評価対象となっている学習者からも評価されるか否かにより評価が変化するかについて実験を行った.その結果,お互いに評価しあう方が甘い評価を行う傾向があり(「お互い様効果」),お互いに評価しあわない方が教員の行った評価に近いことが分かった.そこで「お互い様効果」を除去し合理的に評価すべき相手を選択し,相互評価を容易に実施できるツールを開発し,その評価を行った.学生と教員による評価の結果,相互評価をさせる場合に有効であることがわかった.