本研究は,カード構造化法を用いることで可視化される大学初任教員の授業省察の特徴と利用の限界を明らかにする.具体的には,哲学と歴史学を専門とする大学初任教員2名を対象とし,カード構造化法を用いて,授業省察を可視化した.その結果,カード構造化法によって促された授業省察は,大学初任教員にとって授業デザインへの意識の高まり,授業改善のための多様な短/長期的な課題を発見し,フィードフォワード情報へとつながることが確認された.このことからカード構造化法は,大学初任教員の授業省察の可視化を促すツールとして機能する可能性を持つことが示された.同時に,効率的な実施方法の開発の必要性が明らかになった.