2016 年 39 巻 4 号 p. 305-319
授業中の会話という共同行為の生成過程を教室空間におけるコミュニケーションと教材との関係の生成過程として詳細に検討する試みが少ないことに鑑み,本研究では授業中のジョイント・アテンション(以下JA)を扱った.特に,具体的な授業場面でJAがどのように機能しているかの解明を目的とした.コの字型に机が並んだ教室における公民科の授業場面の会話を,発話内容にだけでなくJAを構成する行為にも着目して検討した.その結果,当該場面でJAが,学級全体の共同行為と局所の共同行為との関係や,物の同定や,指すという行為や,聞くことと見ることとの関係や,思考の相互比較を重要な契機として集団活動の成立や教材についての思考に関与していることが解明された.言いよどみや錯綜した多様な文脈を孕んだコの字型の学級における論理的とはいえない会話が,JAにより教室空間における共同行為として生成し公民科の教材についての会話となっていた.