日本教育工学会論文誌
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39 巻 , 4 号
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論文
  • 常田 将寛, 椿 美智子
    2016 年 39 巻 4 号 p. 259-270
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     本研究では,批判的思考力に関わる3つのスキルに基づき大学生を対象にタイプ分けを行い,タイプ毎に批判的思考に関する態度や行動と能力の関係を分析するとともに,能力を高めるために態度や行動を通して寄与している要因を分析した.その結果,3タイプに分類することができ,批判的思考力に関わるスキルが比較的高いタイプでは小中学生時からの経験の積み重ねが現在の行動に影響を与えており,能力が身に付いていることが分かった.また,スキルが全体的に高くないタイプでは,過去からの積み重ねと結びついておらず,現在の行動が能力に影響を与えていること,文章コミュニケーション力のみ高いタイプでは,態度がその能力に影響を与えていることが分かった.そして,条件付き確率分布を考察することにより,批判的思考力に関わるスキルが高いタイプと低いタイプで,必要な行動や態度の強さによる能力向上の変化に違いがあることが分かった.
  • 奥本 素子, 岩瀬 峰代
    2016 年 39 巻 4 号 p. 271-282
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     長期にわたる協調学習であるPBL(Project Based Learning)では,人間関係やチームの雰囲気が協調学習にも影響を与えていると考えられる.しかし,これまでPBLにおけるチーム内の協調学習支援の在り方は十分に検討されることが少なかった.本研究では,チーム内で議論がどのようにデザインされ,どのように協調学習を成立させているのかということをPBLに参加した成員に対して実施したインタビュー内容を分析することによって検討した.その結果,活動初期に目的が共有されたチームは協調的議論自体をデザインし,客観的な評価軸以外にチームが納得できる評価軸を構築することにより,多様な意見を受け入れる素地を生み出すことが確認された.加えて,このようなプロセスを経た協調的議論では課題が共有されやすいため,活動の効率化にも効果があることが示された.これらは先行研究で指摘されている共有された認識主体性 (Shared Epistemic Agency)に類似した概念であり,協調学習では学習自体がチームによってデザインされているということが明らかになった.
  • 河崎 雅人, 竹下 紗由里, 森田 泰介
    2016 年 39 巻 4 号 p. 283-291
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     面積・体積の大きさの比較判断における年齢による発達の違いを明らかにするために,子ども園園児及び小学1,2,3年生を対象に,2つの平面図形(正方形,長方形)や2つの立体図形(直方体,立方体)を提示し,大きさの比較判断を求めた.その結果,面積の比較課題の正答率はほぼU字型の発達曲線を描くが,体積の比較課題の正答率はほぼ直線的に上昇することがわかった.また,判断に用いた次元から,子ども園園児や1年生は縦や横の長さ,高さの違いを独立して処理し,面積や体積の大きさを比較するが,2年生になるとこれらの要素を統合して処理することができるようになることがわかった.これらのことから,3歳児の面積の比較判断における正答率が4,5歳児より高くなる理由として,BAUSANO and JEFFREY(1975)の「3歳児は面積ではなく最も長い辺に着目して大きい方を選ぶ」という説を支持する結果となった.
教育実践研究論文
  • 島 智彦, 渡辺 雄貴, 伊藤 稔
    2016 年 39 巻 4 号 p. 293-304
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     本研究では,中学校の数学授業に,協同学習の基本技法と協同の価値提示を取り入れ,生徒の協同作業に対する認識の変容を調査することを目的に2つの研究を行った.研究Ⅰでは,第1著者が,日常的に協同学習の基本技法を取り入れ,適宜協同の価値提示を行う授業について,第1学期を通して継続して行い,主に個人志向因子の低下という側面から協同作業に対する肯定的な認識を高めることが示された.研究Ⅱでは,同学年,同科目を指導する他の2名の教師に同様の授業について第2学期を通して継続して行ってもらい,個人志向因子の低下および互恵懸念因子の低下という側面から協同作業に対する肯定的な認識を高めることが示された.以上より,協同学習の基本技法と協同の価値提示を取り入れることが,協同作業に対する認識を肯定的に変化させ,生徒間の相互作用を重視した指導を導入していく際の有効な方法であることが示唆された.
資料
  • 古市 直樹
    2016 年 39 巻 4 号 p. 305-319
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     授業中の会話という共同行為の生成過程を教室空間におけるコミュニケーションと教材との関係の生成過程として詳細に検討する試みが少ないことに鑑み,本研究では授業中のジョイント・アテンション(以下JA)を扱った.特に,具体的な授業場面でJAがどのように機能しているかの解明を目的とした.コの字型に机が並んだ教室における公民科の授業場面の会話を,発話内容にだけでなくJAを構成する行為にも着目して検討した.その結果,当該場面でJAが,学級全体の共同行為と局所の共同行為との関係や,物の同定や,指すという行為や,聞くことと見ることとの関係や,思考の相互比較を重要な契機として集団活動の成立や教材についての思考に関与していることが解明された.言いよどみや錯綜した多様な文脈を孕んだコの字型の学級における論理的とはいえない会話が,JAにより教室空間における共同行為として生成し公民科の教材についての会話となっていた.
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