2016 年 40 巻 2 号 p. 75-84
本研究は,半期の大学の授業内における縦断調査から,自己効力感,内発的価値,感情的エンゲージメントの関連について検討を行った.3つの大学の学生217名に,3回の縦断調査を行った.構造方程式モデリングによって交差遅延パネルモデルを構成して分析を行った結果,半期の初期の内発的価値が,中期の感情的エンゲージメントに正の影響を与えることが示された.また,中期の自己効力感が後期の内発的価値,感情的エンゲージメントに正の影響を与えること,中期の感情的エンゲージメントが後期の自己効力感,内発的価値に正の影響を与えることが示された.これらの結果は,セメスターの時期によって,期待と価値が学習に影響するタイミングが異なることを示している.以上の結果に基づき,大学生の学習過程における自己効力感,内発的価値,感情的エンゲージメントの役割について議論が行われた.